エラリー・クイーン

 私がミステリーにどっぷりと浸かるようになったきっかけは、高校生の時に、エラリー・クイーン(Ellery Queen)「国名シリーズ」創元推理文庫で読破したことです。最後に出てくる「読者への挑戦」に強い好奇心を抱き、ああでもない、こうでもないと、ゾクゾクしながら、推理を広げて知的興奮を味わったものでした。この10冊を一つずつ制覇していき(『ローマ帽子の秘密』『フランス白粉の秘密』『オランダ靴の秘密』『ギリシャ棺の秘密』『エジプト十字架の秘密』『アメリカ銃の秘密』『シャム双子の秘密』『チャイナ蜜柑の秘密』『スペイン岬の秘密』『日本カシドリの秘密』)、さらには『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』の四部作へとはまっていきました。

 作家エラリー・クイーンは、フレデリック・ダネイ(Frederic Dannay、1905~1982)マンフレッド・ベニントン・リー(Manfred Bennington Lee、1905~1971)の共同ペンネームです。二人は共にユダヤ系の従兄弟同士でした。20代の前半に、出版社が主催する長篇ミステリコンテストに合作で応募したところ、いったん受賞が内定した後で取り消される(雑誌社の破産に伴う経営者の交代により)という不運があったものの、のちに『ローマ帽子の秘密』として刊行されました。その後、探偵・エラリーの活躍を同名の作者が記す設定の作品(初期作品は日本では「国名シリーズ」と呼ばれます)を書き続ける一方で、覆面作家バーナビー・ロス(Barnaby Ross)として、聴覚を失った元シェイクスピア俳優ドルリー・レーン(Drury Lane)を探偵役とする「レーン四部作」も発表します(『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』)。ダネイがプロット担当、リーが執筆担当であったと言われています。

 ダネイリーは、いわば「二人二役」としてエラリー・クイーンバーナビー・ロスを演じ、両方の名義で世界ミステリ史上に残る傑作を連発しました。ある時、二人は講演会でどちらも覆面をかぶって登場し、互いに相手を激しく批判するパーフォーマンスを行ったと言われています。クイーンロスが同一人物だったことが明かされたのは1940年のことで、これもまたミステリ史上に残る大事件だったと言えるでしょう。『ローマ帽子の秘密』の中で「バーナビー・ロス殺人事件」なる語句を挿入して読者にヒントを与えていたのだと主張しました。

 作品中で、 「以上の説明がわかりにくいとしたら、それは英語ということばが複数の人間のからんだややこしい話を説明するのに適していないからである」などといった、人を食った書き方をするのも、いかにもクイーンらしいと言わねばなりません。作者はわざとまわりくどい書き方をして読者を煙に巻き、楽しんでいたのかもしれません。

 高校生の頃からエラリー・クイーンのファンだった私は、大学生になって、都会の洋書店で、Ellery Queen’s Mystery Magazine(EQMM)というアメリカの小ぶりの洋雑誌を見つけて定期的に買うようになりました。これは1941年にアメリカで創刊された月刊ミステリー小説誌です。人気が高く、フランス、カナダ、ポルトガル、オーストラリア、スウェーデン、日本などで各国版の『EQMM』が発行されました。最近では大型書店でも洋書の取り扱いをやめる所が多く、都会の大型書店でも、この雑誌を置いている所を見なくなりました。

 もちろんこの誌名は、ミステリー作家であり初代編集長でもあるエラリー・クイーンに由来します。1941年、当時アメリカ有数の推理作家として知られていたクイーンが、自ら編集長となって創刊したパルプマガジンが『EQMM』でした。「エラリー・クイーン」フレデリック・ダネイマンフレッド・リーの共同ペンネームですが、雑誌の編集長を務めたのはフレデリック・ダネイの方でした。1982年のダネイの死後も編集が引き継がれ、現在まで長く続いています。『EQMM』はその編集水準の高さから、1950年代から1970年代の短編小説の減少期間を生き抜いた数少ない小説誌の一つでした(1950年にMWA賞特別賞受賞)。現存するミステリー小説誌の中では最も長く続いています。また、新人作家の育成にも力を入れてきたことも特徴の一つです。今日では主要な出版物は著作権代理人を通した投稿しか受け付けませんが、『EQMM』の初作品部門はアマチュアからの郵送による投稿も受け付けており、初作品部門では数百人の新人作家を発掘してきました(その多くが常連投稿者になっています)。新人作家に加えて、有名作家の短編小説もよく掲載されていましたね。1961年にMWA賞巨匠賞を受賞しておられます。

 大学生・教員生活へと、私のミステリー中毒は続き、アガサ・クリスティ(Agatha Christie)、エド・マクベイン(Ed McBain)、アール・スタンリー・ガードナー(Earl Stanley Gardner)、ブレット・ハリディ(Brett Halliday)、ジェシカ・フレッチャー(Jesicca Fletcher)、パトリシア・コーンウェル(Patricia Cornwell)、ロビン・クック(Robin Cook)などにはまっていきました。英語の勉強にはもってこいの作家達でした。♥♥♥

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