サメはなぜ他の魚を襲わない?

 私は全国に100以上ある水族館を制覇する」という野望を持って、訪れる度に地図上で一つずつ潰していっています。今年は「須磨シーワールド」「京都水族館」を訪れました。メインの大きな水槽の中には、さまざまな種類の魚たちが泳いでおり、本来なら、近くで生活していることはないだろうな、と思うような魚が、一緒に泳いでいる姿は、水族館ならではの光景で微笑ましく思います。そんな私が、巨大水槽の中をのぞくたびにいつも不思議に思うのは、サメの存在です。水族館サメって、どうして一緒に泳いでいる魚を食べないのだろう?どうしても私の中では、印象深かった映画「JAWS」の影響でしょうか、サメには凶暴なイメージがあります。凶暴なはずのサメが(ジンベイザメなどのような例外もありますが)、同じ水槽の中を一緒に泳ぐ魚をなぜ襲わないのか、いつも不思議に思っていました。下記の本によれば、水族館に関する疑問の第1位がこれなんだそうですよ。

 サメに限らず、ほとんどの生き物は、生きるために食べています。特に肉食系の生き物は、お腹がいっぱいの時にはストレスが少ないため、狩りをすることはないのです。人間のように、食事を楽しんだり、デザートは別腹、なんてことはありません。お腹がすいたらエサを探して食べるという単純な行動なのです。自然の海の中ならまずエサを探し回り、狩りをします。そうやってようやくエサを食べることができるのですが、この行動にはかなりのエネルギーを消耗することになります。しかし水族館では、決まった時間に十分なエサをサメに与えているので、彼らはわざわざエサを探して狩りをして食べるというエネルギーを使う必要がないわけです。つまり、水族館サメが同じ水槽の魚を食べないのは、サメがお腹をすかせないように管理をしてエサやりをしているからなのです。定期的に栄養価の高いエサ(例えば魚やイカなど)が提供されています。さらには、水族館の環境はサメの自然な生育環境とは異なり、ストレスや興奮を減少させるように適切に管理され設計されています。サメが他の魚を襲わないように、展示の中には隠れ場所や十分な空間があり逃げることができる環境が整っています。サメと一緒に展示する他の魚類が相性が良いように配慮もされています。特定の魚類(素早く泳ぐ魚、群れで行動する魚)と一緒にすることで、サメの攻撃的な積極行動を最小限に抑えることができているのです。展示されている動物たちの間でトラブルが起こらないように、展示の安全性が確保されているのですね。サメも苦労せずにエサがもらえる環境なら、面倒な狩りなどしないというわけです。最新刊のなんかの菌『水族館飼育員のただならぬ裏側案内』(集英社インターナショナル、2025年)でもこの問題が取り上げられました。捕食者たるサメや大型魚に餌をやり、おなかいっぱいの状態にしてから、大水槽にイワシの搬入を行います。搬入後もサメたちがイワシを追いかけ回すことがないように、餌のやり方を工夫しています。生き物どうしのバランスを見ながら、飼育員は展示の構成に苦労しているのです。

▲この本実に面白い!!

 要するに、サメ水族館で他の魚を襲わないのは、①餌が与えられていること②共存しやすい環境が作られていること、そして、③個体ごとの行動パターンなどが影響しているからです。

 さて、厳密に十分なエサを与えられてお腹がすいてはいないはずなのに、実はまれに、サメが魚を食べてしまうこともあるそうです。やっぱりね。スチーブン・スピルバーグの人食いザメの映画「ジョーズ」でも描かれていましたが、サメは血の匂いにとても敏感です。水槽の壁に激突して血が出てしまった魚がいると、異常に興奮して食べてしまうことがあるそうです。サメは一滴の血を100倍に薄めたものすら感じ取ることができると言われるほど、血に敏感なんです。また、弱って動きが鈍くなっている魚にも、サメは反応します。動きが速くて元気な魚は襲う気になりませんが、目の前に弱々しく泳ぐ魚がいれば、食べてしまいます。これはサメの本能なのかもしれません。サメが食べてしまえば、水槽の中の魚が減ってしまいます。水族館では減った分の魚を、ときどき補充しているのだとか。私などは、サメが魚を襲うほうが普通だよなと、素直に思ってしまいます。

 そうなると大切な魚の数がどんどん減っていってしまいますが、それでもサメをその他大勢の魚たちと一緒に飼育・展示するのには理由があります。それは「外敵がいる状態(自然に近い環境)を作ることで、他の魚たちが自然に近い行動を起こすようになるから」です。例えば、イワシは外敵から身を守るために群れで行動し、自分たちを大きく見せます(⇒イワシの巨大な群について詳しくはコチラに書きました)。これは外敵がいる緊張状態だからこそ見られる光景なので、サメを同じ水槽に入れるのは非常に効果的なのです。イワシの大群は水族館の目玉ショーにもなるほど迫力のある展示なので、お客さんにとっても嬉しいものですからね。♥♥♥

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