イギリスのWord of the Year

     我が国の今年の「流行語大賞」は、高市総理「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」でした。英国のオックスフォード大学出版局は12月1日、「今年の言葉」(Oxford Word of the Year)として、3日間にわたる3万人以上の投票により、「レイジベイト(rage bait)」を選んだと発表しました(最終候補はaura farming, biohack)。意図的に怒りを引き起こすようなオンライン上の文章や画像を意味し(「(n.) 特定のウェブページやソーシャルメディアアカウントへのトラフィックやエンゲージメントを増やすために、意図的に怒りや憤りを引き起こすために意図的に設計されたオンラインコンテンツ。」)、この言葉の使用量は過去1年で、以前の3倍に増加したと言います。読み手から苛立ちを引き出して感情を煽る、その手の記事や短文投稿はネット・SNSの閲覧数を稼ぐ常套手段となっています。直訳すると「怒りのエサ」ですが、「炎上狙い」に近いものがあります。次から次へと「餌」を求めてスマホをいじる指を想像してしまいます。

 2025年のニュースサイクルは、社会不安、オンラインコンテンツの規制に関する議論、デジタル・ウェルビーイングに関する懸念で占められており、今年のrage baitの使用は、私たちが注意をどのように与え、どのように求めるか、エンゲージメント、オンライン上の倫理について語る方法の深い変化を示すものとして進化していることに注目しました。発表によると、メディアの編集局やコンテンツ制作者間での議論でよく用いられ、ユーザーの関与を促すための戦術としても知られます。具体的には、特に「陰謀論に基づく意図的な誤情報という形」で表出するといいます。オックスフォード・ランゲージズキャスパー・グラスウォール社長は、この2025年について、テクノロジーと人工知能(AI)が日常に深く入り込み、「オンラインとオフラインの両方で『本当の自分とは何者か』をめぐる問いに特徴付けられる年だった」と述べた。その上で「ネットはかつて好奇心を刺激してクリックを得ることに注力していたが、いまは私たちの感情や反応を乗っ取ったり、影響を与えたりする方向に劇的にシフトしている」と指摘しています。昨年の「言葉」は、「ブレーンロット(brain rot、脳ぐされ)」でした。オンラインコンテンツの過剰消費によって精神・知的状態が劣化することを意味し、2年連続でオンライン関連の言葉が選ばれました。グラスウォール氏は発表で「怒りがエンゲージメントを呼び、アルゴリズムがそれを増幅し、絶え間ない『さらし』が我々を精神的に疲弊させる。二つの言葉はそんな強力な循環を形成する」と説明しています。

 「「怒りの餌」は二つの単語じゃないか?」という批判がありますが、Oxford University Pressは、「オックスフォード・ワード・オブ・ザ・イヤー」は単数形の単語や表現であることもあり、辞書学者たちはそれをひとつの意味単位として考えています。rage baitは、激しい怒りの爆発を意味するrageと、魅力的な餌を意味するbaitの合成語である。どちらの言葉も英語では定着しており、その歴史は中英語時代までさかのぼり、語源的に関連するクリックベイト(clickbait)とは類似しているが、rage baitは怒り、不和、偏向を呼び起こすという、より具体的な焦点を持っている。rage baitが独立した用語として登場したことは、英語の柔軟性を浮き彫りにしています。2つの確立された単語を組み合わせることで、特定の文脈(この場合はオンライン)においてより具体的な意味を持たせることができ、また2つの単語を組み合わせることで、私たちが今日生きている世界に共鳴する用語を生み出すことができるのだ、と説明しています。

 また、Cambridge Dictionary では、2025年の年間最優秀言葉を発表し、「parasocial(パラソーシャル)」という用語を選びました。これは、実際に知らず、人間関係も持っていない有名人や有名人と関係やつながりを築くときに、人々がどのような行動をとるかを示す、ますます一般的な表現となっています。定義はそう説明しています。「パラソーシャル:誰かが知らない有名人、書籍、映画、テレビシリーズの登場人物、または人工知能との間に感じるつながりに関わる、または関連するもの」。画面越しの有名人やキャラクターなどに対して、一方的に親近感や関係性を抱く心理現象です。最近、インフルエンサーの増加やChatGTPのような対話型AIの使用増加により、この言葉の人気が高まっているようです。この言葉は、アメリカの社会学者たちが1956年に作り出した言葉で、当初はテレビに登場する芸能人との関係性を説明するために用いられたものです。Cambridge Dictionary の編集長コリン・マッキントッシュは、パラソーシャルの選定について次のようにコメントしています。

 「Parasocialは2025年にいくつかの理由で際立っていました。今年、この用語への関心は大幅に高まりました。データからもわかるように、ケンブリッジ辞典やGoogleでの検索数が何度か急増しました。言語的な観点からは興味深いのは、学術用語から一般の人々がソーシャルメディアの投稿で使う用語へと移行したからです。また、2025年の時代精神を捉えており、セレブリティやそのライフスタイルへの一般の関心が新たな高みへと高まっているのです。」

 Word of the Year のショートリストに入った言葉については、偽名化」 と 「ミーム化」の両方が この段階に達し、「 グレージング」「バイアス」バイビー」「ブレスワーク」ドゥーム・スペンディング」 もすべてCambridge Dictionary によって追跡されていました。

 もう一つ、イギリスのハーパーコリンズ社が発行するCollins Dictionaryが選んだ「今年の言葉」(Word of the Year)は、Vibe coding」でした。「雰囲気コーディング」と訳されるこの言葉は、AIを使用して自然言語をコンピューターコードに変換する新しいソフトウェア開発手法のことです。

 今回ご紹介したイギリスの各社英語辞典が選ぶ「今年の言葉」は、全てインターネットまたはAIに関連する単語でした。現在の社会に良くも悪くも多大なる影響を与えているからでしょう。間もなくアメリカの「今年の言葉」が発表になりますから注目をしています。♥♥♥

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