「ゴンドラ」

◎週末はグルメ情報!!今週はパウンドケーキ

 東京・市ヶ谷靖国神社の通りを挟んで真正面に洋菓子店「ゴンドラ」があります。創業は1933年(昭和8年)で、地元でも大人気の創業93年の老舗洋菓子店です。洋菓子店がまだ数店しかない時代、初代・細内善次郎さんが店を構えました。店内は昔ながらのケーキ屋さんのイメージそのままで、レトロな感じが今では逆にお洒落です。作られているケーキやクッキーも素朴な味わいを楽しむことができます。こじんまりとしたお店です。たまたま月刊『致知』最新号で、オーナーがお菓子作りへの思いを書いておられ、わざわざ東京まで買いに行き、絶品だったパウンドケーキを懐かしく思い出しました。

 JR市ヶ谷駅周辺は、皇居や防衛省が近く、治安が良い場所で、古くからの高級住宅地としても有名です。「ゴンドラ」を日常使いとして利用する客層はセレブ層も多く、上質なものへのこだわりがある人も多いのです。店を目当てにした客は男女を問わずひっきりなしに訪れ、贈答用でたっぷりとお菓子やケーキを買っていく人も多いといいます。「ゴンドラ」で作るお菓子はどれも洗練された素材が使われており、上品な味わいであることから地域に根付いたケーキ屋さんです。

 戦前から親子3代続く伝統の洋菓子店が「最高傑作」とうたう丸型のパウンドケーキは、全国に熱烈なファンを持っています。手土産として〝食通〟の人に贈っても喜ばれる名品です。このパウンドケーキを手掛ける洋菓子店「ゴンドラ」の2代目オーナーシェフ、細内 進さん(ほそうちすすむ、87歳)は、日本スイーツ界の先駆者で、「知られているケーキをよりおいしく作ること」がモットーです。「お客さまは“わざわざ”当店を目指して来てくださるので、そういう方に満足して買ってもらえるよう努力しないと、と思っています」と話します。昭和36年に、アジア人で初めてスイス国立リッチモンド製菓学校で学び、その後、パリの最高峰メゾンの一つ、ルノートルで修業したという、日本スイーツ界の先駆者です。一年間でスイス、フランス、イタリア、ドイツを渡り歩いて修行しておられます。帰国後は、ヨーロッパで覚えたタルト類を日本でいち早く商品棚に加えました。本場の良さを取り入れつつ、お客さんの口に合うように創意工夫を重ねていかれました。80歳を過ぎた今でも、早朝から息子さんと工房に立ち、洋菓子づくりの指揮を執っておられます。毎朝5時に起床し、1階の厨房の上にある自宅から階段で下りてくる時、その日の気温と湿度を肌で感じていると言います。「大事なのは経験と勘だよ」と腕をたたく細内さんは、1996年、伝統工芸や工業、調理など各分野で卓越した技能を持つ人を表彰する厚生労働省の「現代の名工」に選ばれたこともあります。2005年には「黄綬褒章」を受章されました。そのお菓子作りは、まさに職人技といってもよいものです。

 「ゴンドラ」が「最高傑作」とするのが「パウンドケーキ」です。パウンドケーキとは、バター、卵、砂糖、小麦粉を1パウンドずつ合わせて焼く洋菓子の定番です。いたってシンプル。しかし、一口食べればその上品な味わいと、しっとりとした口当たりに感動させられます。底に敷き詰められているラムレーズンも絶妙です。最高級のバター、ラム酒を使うなど素材にこだわっておられます。だが、「良い材料を使えばよいというものでもない。材料を生かして使わないと意味がない」細内さんは語ります。シンプルなお菓子こそごまかしがきかない。「ヨーロッパと日本の気候は異なる。毎日の気温、湿度によって卵の泡立て方や生地の混ぜ方などを調整している」と。創業期から一般的な長方形の形で作っておられましたが、1955年頃からクリスマスケーキの注文が増え、丸い焼き型を大量に使うようになり、試しにパウンドケーキも同じ型で焼いたところ好評を博したので、このお店特有のホール状が誕生しました。写真のように「パウンドケーキ」が丸いのも、「ゴンドラ」の特徴です。ちなみに、「パウンドケーキ」丸缶に入れて販売しているのは、湿気を防ぐためとのことです。

▲ケーキの底にはたっぷりとレーズンが敷き詰められている

 細内さんは幼いころから、父親の善次郎さんがお菓子を作る姿を見てきました。21歳で菓子修業のためヨーロッパに留学。スイス、フランス、ドイツなどを巡り、製菓学校や菓子店で修業。帰国して、日本に本場の味を持ち込みました。当時は日本人がヨーロッパに行くこと自体、珍しかった時代です。日本円を両替する場所も少なく、日々生活するだけでも精いっぱいでした。その留学の経験があるからこそ、苦境がありながらも工夫して店を80年以上、続けられているのだと言います。息子で3代目の滋之さん「たくさんの人に愛されている店。伝統を守りつつ、よりおいしいお菓子を作り続けたい」と話します。親から子へと、信頼の味は受け継がれています。

 創業80年を迎えた「ゴンドラ」には熱烈なファンが多くいます。名門であるスイス国立リッチモンド製菓専門学校を卒業した先代は「知られているケーキをより美味しく作ること」をモットーにしていました。そして、フランス、ドイツ、ベルギーで修行した三代目の店主が今もその伝統の味を守り続けています。一番の特徴は、飲み物がなくても喉をすっと通るほどしっとりしていること。バターの風味がよくきいた生地に、12年もののラム酒に漬け込んだレーズンが加わり、甘く濃厚な香りが口内で広がります。しっとり感を損なわないため、また、冷蔵庫に保存したときに匂いが移るのを防ぐために、ケーキと同じく丸い形をした缶に入っています。ときどき、できたてのお菓子をパクッとつまんでは満足そうにうなずくシェフ。その横顔からは、お菓子が好きでたまらない、といった感じがにじみ出ています。「朝から晩まで、お菓子を食べてますよ。菓子屋が菓子を食べないなら、やめたほうがいいですよ」と。

 教員になって初めて担任した女生徒が、毎年高知からいつも珍しい物を贈ってくれ、私の健康を気遣ってもらっていたので、このお店から「パウンドケーキ」を送りました。その直後に急死したと知らせが入り、びっくりしたのを覚えています。レーズンが苦手なお客さんのために考案された「オレンジケーキ」も買って帰りました。輝く太陽をいっぱいに浴びた新鮮なオレンジのコンフィ(シロップ漬)をフレッシュバターたっぷりの生地に入れて焼き上げた「パウンドケーキ」です。香り豊かなオレンジの風味を存分に活かしたバターケーキの逸品です。これも美味しかった。私がお邪魔した時も、そしてお店にいる時も、次々とお客さんが入って来られる人気店でした。一時期はデパートへの出店や宴会場の卸売も引き受けておられましたが、1960年代後半からは一切やめておられます。目の前のお客さんの顔を見ながらお菓子をつくる「町のお菓子屋さんでありたい」という信念を貫いてこられたからこそ、あのバブル崩壊やコロナ禍でも客足が途絶えることなく歩んできておられるお店です。♥♥♥

▲オレンジケーキ

 

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