ダイアーの例え話

 子猫が自分のしっぽをつかまえようとしているのを見て、大きな猫がこう尋ねた。「どうして自分のしっぽをつかまえようとするの」子猫が答えた。「猫にとって一番大事なのは幸せで、その幸せは僕のしっぽだってことがわかったんだ。だからつかまえようとしているの。しっぽをつかまえたら、きっと幸せになれるんだ」するとその年取った猫が言った。「坊や、私もそういうことに関心を持ったときがあった。私も幸せは自分のしっぽにあると考えた。けれど、気がついたんだよ。しっぽは追いかけると決まって逃げていく。でも、自分の仕事に精を出していると、しっぽは私がどこへ行っても必ずついてくるみたいだよ」     (ウェイン・ダイアー)

 この例え話はとても示唆的です。成績を何とかして上げたい、上げたいと思っているうちはなかなか上がらない。無心で頑張っていると、いつの間にかスーッと成績が上がっている。お金も同様。貯めよう、貯めようと欲を出しているうちはなかなか貯まらない。お金を欲しがらなくなった途端に、必要を満たすだけのお金が入ってくるようになるのです。何も期待しないで人にあげればあげるほど、思わぬ形で自分に返ってくる。そんな体験を私は山ほどしてきました。生徒たちには、「一度こだわりを捨ててみては」とアドバイスすることにしています。このネコの例え話はウェイン・ダイアー『自分のための人生』(三笠書房)に出ていました。訳者は、学生時代から尊敬する故・渡部昇一先生です。松江市にお越しになった時に、知人を介して、初めてお会いすることができ、その後、『ライトハウス英和辞典』の推薦文まで書いていただき感激でした。無心で頑張っていると、思わぬ人がこういうチャンスを与えてくださるんです。

 尊敬する故・藤本幸邦老師(曹洞宗・円福寺)の言葉「お金を追うな、仕事を追え」も同様のことを述べたものです。「お金、お金」とお金を追いかけているうちは一流にはなれません。もちろん、お金を全く稼げないというのもまた一流ではありませんが、「良い仕事をして、その結果、お金を稼ぐ」という気持ちを持つことが大切です。この順番が大切なんです。もっと言えば、お金を稼げるくらいの良い仕事をしなければならないのです。良い仕事を通じて周りの人に喜んでもらい、さらにそれをもっと工夫して、多くの人に喜んでいただく。そうすれば、仕事は間違いなく楽しくなってきます。それが仕事に対する正しい考え方だと私は思っています。良い仕事を一生懸命追いかけていれば、お金や地位や名声などは後からついてくるものです。私もその思いで、今までずっと誠心誠意仕事をしてきました。お金に執着することは一切ありません。私は人にご馳走することも多いのですが、本当に不思議なことに、おごってあげた後には、思いもかけないところからそれ以上のお金が転がり込んだりします(最近もそうでした)。とにかくいい仕事を追いかける。これに尽きます。お金に執着しないことです。

 私の生き方の大きな支柱となっているものに、「たらいの法則」があります。 水を張った「たらい」で、自分の方に水を寄せようとすると、 返って反対側に行ってしまいますね。逆に自分の反対側に水をやると、しばらくすると自分のほうに返ってくる。同じように、「自分が、自分が」という気持ちが強いと、逆にあまり自分は得をしない。相手にただ奉仕をする気持ちになると、巡り巡って自分のためになる、 というものです。これは私の大好きだった経営者・故・稲盛和夫(いなもりかずお)さんの「利他の心」の実践版です。

 おまえ、ここに水が入った盥(たらい)があるだろう。両手でその水を自分の方へ左右から送ってごらん。水は初め、自分のところに集まるけれど、すぐに自分の手元から離れていく。反対に、水を左右に送ってみなさい。水はおのずと自分の方へ集まってくるだろう。自分の幸せばかり考えているとな、その人の幸せはどこかへ行ってしまうのだよ。だから人が喜ぶようなことを、無理せず、少しずつ積み重ねていくことがとても大切なんだな。これを「損して得取れ」と言います。

 たらいに大きな水を張る。手前から人差し指一本で水を向こうに押しやる。水の波紋は途中で消えてしまう。それでも、ただひたすら押し続ける。やがて、波紋は大きくなり反対側の壁にぶつかって自分に返ってくる。与えて、与えて、それでも与え続けること。それはすべて自分のためになる…。そんな生き方をしなさい。

 こんなところから私の人生哲学である“Give  and give”は生まれました。人に喜んでもらうと、いつかは自分に返ってくるんです。もちろん裏切られることもたくさんあるんですが、それはまたそれでいい勉強と思って。見返りを期待するのではなく、人を喜ばせる」ことを目的にしていると、いろんなところで思いもかけずに助けてもらうことも多いみたいですよ。各所の研究会で私が長年苦労して作った資料を、惜しげもなく差し上げると、先生方はとっても喜んでくださいます。「いいんですか?こんなにいただいて」「お土産の資料は本当にすばらしく無料で本当にいいのかという内容です」と。全国の先生方が、喜んでくださったことが、巡り巡って私の元に返ってくるのです。次の言葉は田辺昇一さんの私の好きな言葉です。♥♥♥

 仕事につく動機はさまざまである。日々の糧を得んがために働くとか、何か欲しいものを手に入れたいために働くとか、仕事を手段に考えている時期がある。仕事を手段に考えておれば、仕事に身が入るわけがない。仕事そのものが好きで、仕事を愛し、仕事を生涯の目標として考えると、自分と仕事が一体となる。仕事を通じて、自分が大きくなり、自分の成長が大きな仕事をさせる。仕事が自分の中心になれば、時を味方にして、仕事が人間をつくる。

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