高市早苗(185票)氏は、10月4日に行われた自民党総裁選で、小泉進次郎氏との決選投票(156票)を制し、新総裁に選出され、女性初の自民党総裁となりました。高市総裁は選出後の演説で、自民党について「全世代、総力結集で、全員参加で頑張らなきゃ立て直せませんよ」と触れ、「だって今人数少ないですし、全員に働いていただきます。馬車馬のように働いていただきます」と述べました。続けて、「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて働いて働いて働いて、働いてまいります」と意気込みを語りました。この「ワークライフバランスという言葉を捨てます」という発言が、波紋を広げました。高市総裁の覚悟に称賛や期待の声が寄せられた一方で、「下々もそれを見習え、となってしまうんですよ」「それを『いい事』のようにトップが言うのがよくない」などの反対意見が寄せられました。「政治家本人が内心で『ワークライフバランスを捨てる』との思いをもって、仕事に精一杯打ち込むことは自由だが、それを口に出して、国民に対してメッセージとして発することについては賛同しがたい」との厳しい意見もあります。なお、高市総裁の演説の後、石破茂首相が「あそこまではっきりワークライフバランスをやめたと言われて、大丈夫かーいという気がせんではない」としつつも、「国家国民のために、次の時代のために(という)決意の表れだと思っております」と補足しておられます。「ワークライフバランス(WLB)という言葉を捨てる。働いて、働いて、働いて、働いて、働いていく」「全員に働いていただく。馬車馬のように働いていただく」と発言したことが、「人は馬ではない」「時代に逆行している」と、そこら中で物議を醸しています。過労死弁護団全国連絡会議は「政府が進めてきた健康的な職場づくりを否定する」と抗議し、発言の撤回を求める声明を公表しています。さらには「公務員など働く人々に過重労働・長時間労働を強要することにつながり、政府が進めてきた健康的な職場づくりを否定する」と批判しています。「男並み、男以上に働きます、をアピールしなきゃいけないのはしんどい」「ワークライフバランスは、よい仕事と両立するし、よい仕事に不可欠ではないか」私はあの発言は、男性優位で崩れてしまった自民党を根本から建て直すには、女性を捨ててやってみせるしかない、結果を出すしかないという決意の表れだったと思います。がむしゃらに、ひたむきに働きます、との宣言でした。しかし、かけ声もむなしく公明党が連立離脱を宣言し、先行きは混迷をきわめてきました。
ワークライフバランスは、働く人の仕事と生活の両方を充実させるため、政府がその実現に向け憲章まで策定し、推進しているものです。与党の党首が、就任のあいさつでその方針を投げ捨てると公言しました。個人の意気込みと擁護する声もありますが、法律を作る政治家のリーダーが軽々しく放つ言葉ではない、過労死で命を落とした人々の家族らが異論を唱えるのは当然のことだ、という批判もあります。「一部の経営幹部(や政治家)だけが、誰かにその責任を押しつけられる強者です。その人が『馬車馬のように24時間働くぞ』って宣言すると、97%の人は苦しくて肩身が狭くてやる気を失います」と断じる人もいます。
総裁選後、高市氏は麻生氏との会談後、待っていた記者団に対し、「皆様方はワークライフバランスを大事になさってください。私は今、一生懸命働いておりますけれど、今日、日曜日ですよ」と声をかけました。ユーモアと気品が同居していて、ウィットに富んだ、皮肉はあるが余裕のある返しでした。彼女が総務大臣だった2016年9月、総務省の働き方改革について試行錯誤していることに言及。ワークライフバランスの観点から、早朝に担当課長や局長が大臣に対し国会答弁の説明をする「朝レク」のルールを変更したほか、「総務省は、他府省に先駆けて『働き方改革』を進めている役所だと自信を持っており、『テレワーク』の利用率も霞が関ではナンバー・ワンです」とも述べ、ワークライフバランスの整備に取り組んでいたことを思い出します。その彼女がああいう発言をしたのには、今の自民党は普通のことでは立て直せない、並々ならぬ取り組みが必要だということを訴えたかったのでしょう。当然のことと思います。実は、私にもそんな働き方をした時期がありました。「無茶はしてはいけないけど、無理はしろ!」というのが私のモットーです。人に言われたことしかしない、また人と同じことをしていては、先へ行くことはできないでしょう。
まだ40代の頃、島根県立大田高等学校で進路部長を3年間務めました。島根県の中規模校で、国公立大学の合格者がだいたい40人~50人で停滞していた学校でした。進路指導部の体制も課題だらけで、変えなくてはいけないことが山ほどありました。それらを一つ一つ克服していったのですが、教員からの反対も多く、普通にやっていたのでは変えられません。「働いて働いて働いて働いて」頑張りました。一年間ほとんど休まずにさまざなな取り組みを行いました。まず進路指導室のレイアウトを根本から変えました。一部屋潰して生徒が気軽に利用できる進路資料室(赤本、各大学パンフレット完備、コピー機)を新設しました。英語の苦手な生徒達に早朝講座も始めました。最新の進路情報を提供するために進路だより「あむーる」を毎週全校生徒に発行しました。それまで希望者参加だった進路検討会も全職員参加に変えました(管理職の先生にご尽力いただきながら)。そこで検討する資料の内容も再吟味し全面的に新しくしました。当時はまだ珍しかった「進路シラバス」の冊子(1年~3年の担任業務を毎月掲載)を作成しました。生徒たちの強く希望したお正月の学校開放も実現しました。受験の面接練習は担任⇒進路部長⇒校長・教頭の流れで学校をあげて徹底的に応援しました。各地で行われる地区PTAには私が全て出向き直接保護者の方々に訴えかけました。さすがに働き過ぎか、3月高校入試の採点日に倒れて病院直行でしたが。それぐらいにやらないと、改革はできませんでした。全ての取り組みに初めは反対されましたから。幸い、私の進路部長一年目に、国公立大学の合格者が一気に103人にまで伸びました。理解のある管理職(校長・教頭)のおかげと、熱意・バイタリティのある若い先生方のご協力で、さまざまな改革を行い進路指導体制を少しずつ変えていった成果です。全国から学校訪問が相次ぎました。「どうやったらこんなに伸びるんですか?」に対する解答が、訪問の大きな目的でした。生徒たちが最後の最後まで粘って頑張ってくれた結果です。子どもたちが自分の行きたい大学・専門学校に進んでくれたことが、何よりの喜びでした。ものすごく嬉しかったのを覚えています。この成果が契機となって、私が進路部長を務めた3年間は、飛躍的な伸びを記録しました。新しい取り組みがどんどん可能になっていきました。
当時進路部長として、『合格わが道』(島根県立大田高等学校)のに寄せた私の原稿を挙げてみます。2000年のNo.24に掲載された巻頭言です。当時の森山祐次校長、南場俊一教頭の卓越したリーダーシップの下、全職員が同じ方向を向いて、ベクトルを合わせて、組織の力で取り組んだことが、好成績につながったものと確信します。♥♥♥
『できるんだよ、君たちは』
進路指導部長 八 幡 成 人
今年度、大田高校は見事な進学好成績を記録した。担任の先生方は、その要因を「生徒がやる気になった」「クラス全員でお互いに励まし合いながら頑張ろうという雰囲気を最後まで持てた」「最後まで生徒に付き合う姿勢を担任だけでなく、各教科担当の先生方も示した」「チームワーク」「学年集団の団結力と先生方のきめ細かい指導の成果」などと分析された。私は「個人と集団の相乗効果」であったと総括したい。一人ではできないことが集団でなら可能になる、ということをまざまざと見る思いであった。京セラ会長の稲盛和夫さんが、(人生の結果)=(考え方)×(情熱)×(能力)という成功方程式を紹介しておられた。自分の夢を実現したいという情熱も、個人差こそあれ学力(能力)も、みんなが持っている。これに正しい考え方さえ加わるならば、たとえ個々の値は小さくても掛け算のすごい所、期待以上の結果が得られるのだ。足し算ではなく掛け算であり、考え方⇒情熱⇒能力の順であることにも注目したい。ただし、考え方を誤ると、結果はゼロあるいはマイナスとなってしまうことに留意したい。心の持ち方・考え方がちょっと変わるだけで、こんなにも結果が違ってくるものかと驚くことしばしばである。
では学習を進める上で、大切だと思われる「考え方」を5つほどあげてみよう。①授業は真剣勝負(一時間の授業を大切にしよう。授業での集中力高揚のために予習があり、次へのステップを踏み出すために復習が必要となる) ②自らの学習に満足感はあるか(平日最低3時間、土・日あわせて10時間の勉強が不可欠!) ③教科書が最良の参考書(基本は全てここにあり、入試問題も教科書が原点) ④答案を見直す(模試や定期考査の聞違えた箇所こそが宝庫であり、学力向上へのカギ。成功した先輩たちに一致して見られる学習法だ) ⑤恐れずに自己変革を(成果が出なければこれまでの勉強方法が誤りだと思って、取り組みや姿勢を進んで変えてみる進取の精神が重要) みなさんはどうでしょうか。
このような成功するための「考え方」の実例が、この小冊子 『合格・わが道』には満載されている。私自身からの提言は「ウサギと亀」のお話に出てくる亀の行動から引き出すことができる。つまり、(1)他人を気にせずに、(2)自分自身の力を信じ、(3)目標を1点に集中し、(4)最後まであきらめずに100%の力を出し切る、これに尽きるのだ。今年はたくさんの生徒の素晴らしい笑顔を見ることができた。ぜひみなさんにも後に続いてもらいたいと思う。『できるんだよ、君たちは』(金八先生)