『LEAP Basic』改訂版発刊

   竹岡広信(たけおかひろのぶ)先生『必携英単語LEAP Basic 改訂版』(数研出版、1,078円税込)が出ました。5年ぶりの改訂になります。中学英単語の復習から始める4技能対応型の入門編英単語集で、「英語が苦手」「中学校レベルの英語が固まっていない」といった生徒をイメージして、「情報を最重要なものに絞った」単語集です。私は初版の時にも申し上げましたが(⇒初版の私の書評はコチラ)、他の英単語集によくあるように、親版『必携英単語LEAP改訂版』(私は今ある単語集の中では、これがベストのものと思っています)をチョコチョコと編集し直しただけの単なる簡約版ではないということです。全くの別物です。

 今回の大きな改訂ポイントは2つあります。まず第一に、見出し語を1,400語から1,600語に200語増やしています。さらに巻末付録として「+αで覚えておくと役立つ英単語」(200語)を収録しています。基礎力を確実に固め、「大学入学共通テスト」にも十分対応できる構成となりました。Part 1では〈中学英単語の復習と発信に役立つ英熟語〉(400語)、Part 2(300語)、Part 3(300語)の計1,000語をActive Vacabularyに分類し、Part 4(300語)と新たに追加したPart 5(300語)の計600語をPassive Vocabularyに分類しています。『LEAP』という書名には、Learn English Vocabulary Both Active and Passive”(英語に関わる発信語彙も受信語彙も両方を学ぶ)という書名には、英語を自在に使いこなし大きく飛躍して(Leap)欲しいという願いも込められています。また、両見返しには〈入試頻出外来語〉100語も掲載されています。第二に、紙面に掲載されたQRコードからは3種類のデジタルコンテンツ(①音声 ②解説動画 ③ドリル問題)を活用できるようになりました。昨年発刊された親本『LEAP改訂版』の流れを受け継いだものです。これによって、中学英語の復習から「共通テスト」対策までの語彙学習はこの1冊で万全となりました。

 親版の『LEAP』同様に、語のニュアンス・覚えるための工夫・使うための解説が満載です。見出語の語彙難易度をCEFRレベルで明示してあるのも格好の道しるべとなります。全Partに語のニュアンス、暗記の手がかり(語源語呂合わせなど)、重要な派生語、発音のコツ、前置詞のイメージ、などを掲載しています。ここら辺の記述は、竹岡先生ならでは親切な手引きとなっていて、Partごとにカラー刷りの紙面は実に見やすくなっています。前著同様に『活用ノート1~3』が付属教材として用意されていますから、これを本冊と一緒に取り組むことで、内容理解を一層深めることができます。私は刊行以来ずっと勝田ケ丘志学館で、この『活用ノート』を使って、「単語学習⇒英作文」の土台作りを実践しています。

 正確なニュアンスの記述には、先生の鋭い語感が反映されています。arrive at Tokyo「(東京駅)に到着する」arrive in Tokyo「東京(都)に到着する」で、atinの表すところを正確につかむことができます。基本熟語のgive ~upも「~をあきらめる ▲(今までやってきたこと)を途中であきらめる。「〔注意〕「(将来)~することをあきらめる」はgive up (on) the idea of doingと表現する」という記述で、高校生がよく間違える×My mother was ill, so I gave up going to the movies.(母の具合が悪かったので私は映画に行くのをあきらめた)がなぜまずいのかがよく分かります。これは意外な盲点です。かつて、Freeze!(動くな!)の英語が分からなくて射殺されてしまった痛ましい事件がありましたが、その用法を載せた上で、「▲(物が)凍りつく」から「(人が)(こわばって)動けなくなる」まで、と意味の広がりまで丁寧に記述しています。

 まず与えられた語義の正確さに感銘を受けます。favorite「(最も)気に入った」(※「大好きな」ではない)、relative「(家族も含めて)親戚」(※ほとんどは「親類、親戚」)、be willing to「嫌がらずに~する」▲(必要に応じて)~しても構わない(※多くが「喜んで~する」)、satisfactory「(基準をギリギリ満たしていて)満足な」、take part in~「(何かの役割を持って)~に参加する」(※大半が「参加する」)。take ~for granted「~を当然のことと思う ▲当然のことと思い、軽視する」、out of order「(公共物が)故障して」、assume「~と思い込む ▲(根拠はないが)~と思い込む」。almostという単語は、日本語で「ほとんど」と覚えるだけで、その正確なイメージをつかめていないために、間違いが起こりやすい単語です。そのことを問う問題が、センター試験試行テスト共通テストでも何度も出題されました。この単語集では、「ほとんど」と訳語を示して、~まであと少し足りない」という正確な注意書きが添えられています。また高校生が英作文でよく間違えるポイントとして、almost all people「ほとんど全ての人」には([×]almost people)という注意書きが添えられています。ここら辺を押さえて初めてアウトプットにつながります。竹岡先生の豊富な受験指導経験が凝縮された記述ですね。似たような意味の単語の使い分けが丁寧に解説してあるのも、この単語集の特徴と言ってよいと思います。例えば、高校生が作文の時につまづく「乗る」に関しても、get on~「~に乗る ▲「(立ったままでも乗れそうな大きい乗り物)に乗ること 〔頻出〕目的語にはa train「電車」、 a  bus「バス」、 a plane「飛行機」、 a ship「船」などが置かれる」get into~「~に乗る ▲(身体を曲げて比較的小さな乗り物)に乗り込む 〔頻出〕目的語にはa car「(自家用)車」、 a taxi「タクシー」などが置かれる」と有用な解説が見られます。

 感心した点です。ワンポイントアドバイス20に「語中の-y-について!」の記述は勉強になるでしょう。こんなことまで書いてある参考書は稀です(例外は恩師の安藤貞雄『基礎と完成新英文法』)。ワンポイントアドバイス18 「「問題」に対する英語!」issue/ problemも高校生がつまづきやすい問題です(⇒私の考えはコチラです)。envyに載せられた「〔注意〕会話では「あなたが羨ましい」は“Lucky you!”と表現するのが自然」という記述は、作文でそのまま“I envy you.”としてしまう生徒が多いことを考えると素晴らしい注意書きです。in front of~に挙げられた〔注意〕も高校生が陥りやすい間違いを正してくれます。owing to「~が原因で」(*堅い表現)もbecause of~=owing to~=due toと機械的に暗記することの注意点を喚起してくれます。after allの位置(文頭・文末)による意味の区別も読解では最重要な点です。exerciseに挙げられたコロケーションの記述は辞書編集の観点からも実に奥深いものを感じます。

 この単語集では「カタカナ表記」が採用されています。これに関しては先生方にもいろいろなご意見があると思われますが、初学者・英語の苦手な生徒にとっては、発音記号は読めませんから、背に腹は代えられません。2008年にノーベル物理学賞を受賞された益川敏英先生の英語嫌いは有名で(中学1年生の時から)、授業中に先生に当てられた時にマネー(money)という単語を『モーネー』と読みました。するとクラス中が大爆笑に。先生までもが『モーネーか。確かにお金はすぐなくなるよな』とからかいました。それですっかり「英語は性に合わん!」と捨ててしまわれたのです。そんな話を聞くにつけ、カタカナ表記もやむを得ないのかもしれません。

✔ 「理想的な単語集」であることは論を待ちませんが、sufficient「十分な ▲enoughより堅い語」(※ His income was sufficient to support his family.(彼の収入は家族を養うのにはどうにか足りた)〔ライトハウス英和〕の訳文を参照のこと。⇒私の考えはコチラ)、utilize「~を利用する」(※私なら「最大限活用する」とします。⇒私の観察はコチラ)、elderly「年配の ▲年配の、年老いた(old, aged)の丁寧で遠回しな表現」(※英語の変化が観察されます。⇒私の考えはコチラ)、do one’s best「全力を尽くす」(※ ⇒私の考えはコチラ)、various「様々な」(※⇒私の考えはコチラ)に関しては注文を付けたいところです。

 英語の勉強は単語に始まり単語に終わります。従来(今も各所で?)行われてきた「丸暗記」の勉強(英単語=日本語の一対一対応)では、決して英語に強くなることはないでしょう。その理由としては、①まず退屈で面白くありません。②英単語=日本語で機械的に覚えていくと、両者のズレに気づくことがありません。③全て覚えたとしても、それ以上にはならず応用することができません。竹岡先生は高校時代に英語が嫌いだったと聞いたことがあります。何の理屈もなしにただただ覚えることには強い反発を覚えられたのでしょう。先生の数々の著作は高校時代にこういう本があったら自分も英語が好きになれたのになあ、という思いで作っておられるのでしょう。

 著者の竹岡広信先生自身が、『CHART NETWORK英語』No.107に、「『改訂版 必携 英単語LEAP Basic』の刊行によせて」(2025年9月)として、この単語集の執筆に対する熱い思いを語っておられますので、ぜひお読みください。⇒コチラです  入門期に『必携英単語LEAP Basic改訂版』を用いて基礎を固め、必携英単語LEAP改訂版』につなげるというのが、私の描く理想の単語指導となっています。親版の必携英単語LEAP改訂版』同様、みなさんに広くオススメしておきますね。♥♥♥

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