「使う」「利用する」を表す英語表現として、useとutilizeがありますね。ほとんどの受験用単語集ではuse=utilizeとしていますが、英米の辞典を見るとutilizeは “formal”(格式ばった)な英語とあります。意味は“to use something for a particular purpose”[LDOCE] 、“formal to use sth, especially for a practical purpose”[OALD]とあります。LDOCEには“In everyday English, people usually say use rather than utilize : The money will be used to build a new sports hall.”という注記も見られます。竹岡広信先生の『LEAP』には、「日常ではuseの方が使われる」という注記が入っています。私自身もこの程度の理解を持っていました。
しかしながら、ディビッド・セイン先生の『英語ライティングルールブック(改訂新版)』(学研、2024年)には、格式張った語である上に、utilizeには「最大限に利用する」という意味があるので、使用には注意が必要だとあります。次の用例を見てください。
A. This office isn’t being used. ―― B. This office isn’t being utilized.
Aは単に「このオフィスは使われていない」という意味なのに対して、Bは「このオフィスはまだ100%活用されていない」という意味になります。このような大きな意味の違いを生むことがあるので、useの代わりとしてutilizeを使うのは避けた方が賢明だ、というのがセイン先生のご意見でした。use は、一般的な日常用語として非常に広く使え、意味としては単純に「使う」です。 utilize は、use に比べると、日常生活用語としては、めったに使いません。意味としては、utilize は、ただ単に「使う」だけでなく、それを「有効に活用する、最大限に活用する」という意味を含んでいるのです。例えば、The teachers were unable to use the new computers (教師たちは新しいコンピューターを使えなかった)は、The teachers didn’t know how to operate the new computers (教師たちは新しいコンピューターの操作方法を知らなかった)と同じ意味になります。一方で、The teachers were unable to utilize the new computers (教師たちは新しいコンピューターを有効活用できなかった)は、the teachers could not find ways to employ the computers in instruction (教師たちは新しいコンピューターを教育に活用する方法を見つけられなかった)ということを示唆しています。useは一般的で幅広く使われる「使う」という動詞で、日常的な場面で使われるのに対して、utilizeはよりフォーマルな文脈で、具体的な目的のために「(最大限に)活用する」といった専門的・技術的なニュアンスを持ちます。次のような二つの英文の対比をご覧ください。上のutilizeの使用は避けた方が無難でしょう(セイン上揭書参照)。
「この道具はどうやって使うんですか」
△How is this tool utilized?
◎How is this tool used?
「この新しい道具の使い方が分からない」
△I don't know how to utilize the new equipment.
◎I don't know how to use the new equipment.
The company utilized AI to improve customer service.
(その会社は顧客サービスを改善するためにAIを活用した。)
We need to utilize all available resources to solve the problem.
(問題を解決するために、利用可能な全ての資源を最大限活用する必要がある。)
utilizeは、「目的に応じて戦略的に使う」「限られた資源を有効活用する」といった文脈で使われます。したがって、ネイティブでも、utilizeを何でもかんでも多用されると大げさで不自然と感じることがあります。普通の「使う」なら use で十分でしょう。♥♥♥
好業績を継続している企業では「ビジョン」や「理念」が定着し、それが徹底されて確立しています。ビジョンとは企業の「存在意義」です。「ミッション」と呼ばれることもあります。理念とは「行動規範」です。それらが単なるお題目ではなく、そこで働く人に深く浸透しているのが強い会社です。そのためには、経営者自らがまず先頭に立って、ビジョンや理念の体現者とならなければなりませんが、まずその大前提として「目的」と「目標」の違いを十分に認識しておく必要があります。
粉飾や偽装など不正を働く企業や政治家が後を絶ちませんが(例えば最近ではビッグモータ、小林製薬、トヨタ自動車、JR九州、ミニストップ、ニデック等)、それは、この「目的」と「目標」の違いが分かっていない経営者が多いからです。さらには、不正とまではいかなくとも、働く人が活き活きと働いていなかったり、本来ならもっとパフォーマンスが出るはずの会社がそうでない場合にも、この「目的」と「目標」の混在が起こっていたり、本来の「目的」が忘れられているような場合も少なくないのです。みなさんは「目的」と「目標」の違いを理解していますか?「目的」と「目標」を似たような意味だと捉えて、いちいち区別せずに使っている人も少なくないかもしれません。
「目的」と「目標」は、次のように明確に区別することができます。
目的: 最終的に行きつくところ、あるいは存在意義
目標: 目的に至るまでのその通過点、具体的な評価、目的達成のための手段
そもそも「目的」とは一体何でしょうか?それは「存在意義」です。「目標」とは、その通過点であったり、「目的」達成のための手段のことです。「目標」のはるか先に「目的」があるのです。それでは、企業の「目的」とは一体何でしょうか?本来、企業は良い商品やサービスを社会に提供し、お客さまに喜んでいただくことを、目的の一つとしています。それから、それを通じて働いてくれる仲間を幸せにすることも、目的の一つでしょう。地域社会に貢献することも存在意義です。ピーター・ドラッカーは「独自の商品やサービスを提供すること」と「働く人を活かす」ことを企業の目的に挙げていますが、同じことです。その目的達成のために、お客さまに喜んでいただけるような商品やサービスを提供して、今年は「50億円の売上高をあげよう」とか、その結果「2億円の利益を出そう」というのは、「目標」なのです。「東証一部に上場しよう」も目標にすぎません。つまり、「50億円売ろう」というのは、50億円分良い仕事をしてお客さまに喜んでいただこうということです。それを目標に設定することは、社会に貢献しようとする目的と何一つ矛盾しませんし、良い仕事をしようとする時、それを尺度として「50億円分売れるくらい良い仕事をしよう」と考えるのが目標の役割でもあります。ところが、多くの会社が間違ってしまうのは、「50億円売ろう」「2億円の利益を出そう」という、本来なら「目標」とすべきことが、「目的」化してしまっているところです。これだと、部下に対して「数字を出してこい!」という話になってしまいます。そうなれば、東芝の例を出すまでもなく、経営がおかしくなり、働いている人が疲弊してしまうのです。「良い仕事」をし「お客さま第一」を実践することを目的にできるかどうか、さらに目的にし続けられるかどうか。ここが働く人をルンルン気分にし、会社が継続的に繁栄させられるかどうかの大きな分かれ目なのです。99歳でお亡くなりになった藤本幸邦老師(曹洞宗円福寺)は、よく「お金を追うな、仕事を追えだよ」と戒めておられました。「仕事」、それもお客さまが喜んでくれるような「良い仕事」を提供することが目的なのです。世の中が求めているのは、会社の売上高や利益の数字ではなく、「良い仕事」なのです。同様に、「お客さま第一」を目的ではなく、儲けるための手段と考えてしまうと、会社は一時的には儲かっても、いずれうまくいかなくなってしまいます。そんなことは理想論だと思う人がいるかもしれません。ある程度、ビジネスをやっている人は、特にそう思うかもしれませんね。でも、そう思っているうちは、働いていても楽しくないし、本当には儲かってはいないはずです。お金のためだけに働いていて、たいして満足感を得てはいないですし、それでいて、たいして稼いでもいないのです。その最大の理由は、考え方が間違っているからです。正しい考え方さえ持っていれば、ルンルン気分で働けますし、結果として儲かるのです。「お客さま第一」と「良い仕事」を追求する働く人がルンルン気分で働き続けられるかどうかが、とても大切なのです。そのためには、経営者も従業員も、仕事を楽しむことができるレベルに達することが大切なのです。それには「目的」と「目標」の違いを認識することなどの、経営者の基本的な考え方や姿勢が大きく影響しています。「良い仕事(1.お客さまが喜ぶこと、2.働く周りの仲間が喜ぶこと、3.工夫)」をすることに集中させていたら、とにかく「良い仕事」をしていればいいわけですから、従業員は楽しいのです。働きがいを感じるからです。従業員が会社にルンルン気分で来られるのは、仕事が好きだからであり、ひいては、「お客さま第一」や「良い仕事」を通じて、お客さまや社会に貢献することを自覚しているからに他なりません。もし仕事が、お金を稼ぐための手段でしかなかったら、お金を稼ぐまでは楽しいけれど、ある程度稼いでしまったら「もうこんなものでいいか」と思ってしまいます。一方、いつも「良い仕事をしよう」と思い続けていたら、当然のことながら、いつまでもルンルン気分で仕事ができるはずです。なぜなら、多くの人に喜んでもらえるからです。そうして、どの従業員さんもルンルン気分で、良い仕事をすることをずっと追い求めている方が、間違いなく結果として会社は儲かるのです。そのような会社を働く人もお客さまも好きですからね。「お客さま第一」を本当の目的にして、お客さまに喜んでいただける商品やサービスを出し続ける会社は、それができます。だから永遠に発展し続け、永遠に儲かり続けるのです。でも、「お客さま第一」を手段にしている会社は、結局は伸びません。ある程度儲かったら、そこで経営者は満足して、儲かったお金をどう使おうか、余暇をどう使おうか、という話になってしまいます。ここで確認しておきたいことは、「良い仕事」とは、結果として稼ぐことができる仕事だということです。稼げない仕事というのは、人が十分には評価していない仕事ですから、「良い仕事」ではないのです。とにかく、結果として稼ぐことができるくらいの良い仕事をしなければならないのです。良い仕事かどうかは、人が評価するもので、自分で自己満足していてはダメなのです。評価するのはあくまでもお客さまや社会です。
私(=八幡)の人生の「目的」、つまり存在意義の一つは、「英語を通じて社会貢献をする」ということです。自分がこれまでに得た知識や体験を基に、生徒たちに英語を教えて育てることや、先生方に自分の拙い経験をお伝えすること、辞書・参考書・問題集を世に問うことで学習者の便を図ることで、社会に少しでもお役に立ちたい、恩返しをしたい、というのが私の願いです。
目的とは、自分は何のために生きているのか、自分はどういう生き方をしたいのかを考え続けて、その中でやっと見えてくるものです。自分の目の前の仕事を精一杯やり続け、毎日の実践を真剣に続けて行く中でようやく見えてくるものです。高い目的を持って、それを志に高めて、ぶれないで生きたいものです。♥♥♥