運がいいとか悪いとか
人は時々口にするけど
そういうことって
たしかにあると
あなたを見ててそう思う」 (さだまさし「無縁坂」)
泥沼の連敗が続く巨人ですが、今年の巨人・赤星優志投手(あかほしゆうし、26歳)は実に運がいい投手です。昨年は開幕ローテーション入りして、6月までに自己最多の6勝を挙げるも、後半戦は全く勝てませんでした。右肩痛で離脱するまでは、エース・山崎伊織に次ぐ121イニングを投げ、クオリティースタート(6回以上自責3以下)12回と貢献しています。いいピッチングをしていながら、ここぞという時にホームランを打たれて逆転されてしまうという勝負弱さをいっぱい見たような気がします。いつも慎重になりすぎ、きわどいコースを狙ってカウントを悪くしては痛打されるイメージがありました。150キロ台の真っ直ぐを投げ、コントロールもいいのですが、失投もあります。特にカウントを悪くすると甘くなる傾向が強い印象です。今年はチーム事情もあり中継ぎで開幕を迎えましたが、「できることに集中してゼロで抑える。それが一番、チームにとってもいい」と淡々と仕事をしていました。そんな右腕だから野球の神様も味方してくれるのでしょう。
中日戦、星がふってきました。リリーフで貢献を続ける赤星投手に、今季3登板目で初勝利が舞い込んできました。最後は代打・ビシエドを内角147キロで空振り三振。力で押し切りました。「勝てたのもありますし、タイミングも、はい。よかったなと思います」。2回無失点で2奪三振。父親の命日に「勝利投手・赤星」のアナウンスを響かせました。クールな男がこの日ばかりは燃えていました。3番手でブルペンを出たのは、同点に追いついた直後の5回から。最速149キロの直球、フォーク、カーブのコンビネーションでテンポ良く6つのアウトを重ねました。「その日その日で自信のある、一番確率の高い球を選択して投げている。ゼロで抑えられてよかった」。魂の39球で開幕から3試合連続無失点としました。2022年4月4日。プロ入団1年目に父・篤志さん(享年58)が天国へ旅立ちました。がんの闘病中も車いすで東京ドームに駆けつけてくれていた父。実家で仏壇の前に座ると、思うことがあります。「まだまだ自分を応援してくれている」。あれから4年。試合後にスマホを見ると家族からメッセージが入っていました。「勝てたことを、家族もすごく喜んでくれていました。僕も、父が喜んでくれていたらうれしいです」
赤星は実に使い勝手がいい投手です。球も速いし、いろいろなボールをコントロール良く投げ分ける制球力も持っています。悪い言葉で言えば器用貧乏。本当はローテーションに入ってもいい経験と実績もあるのですが、現状は先発が早く降板した時のリリーフ要員。ちょうどWBCの時の第2先発的な役割です。でも今はこうやって我慢して頑張っていれば、また必ず先発ローテーションのチャンスが巡ってくるはずです。それだけの力は持っている投手です。
4月8日は、1点ビハインドの8回に2番手で登板。2死一、二塁のピンチで踏ん張って追加点を阻止すると、9回に泉口が豪快に逆転2ランを放ち、思わぬ勝利投手が転がり込みました。野球の神様はこんなご褒美をくださるのですね。これで開幕から4試合連続無失点で、リーグトップタイの2勝目。試合後は「うれしいです」とチームの勝利を喜びました。巨人は開幕から6勝5敗ですが、そのうちの2勝は赤星の好リリーフで勝利につながっています。
赤星優志投手が、運がいいと評される理由は、彼の投球内容や試合でのパーフォーマンスにあります。彼は、試合中に自分の投球内容を微調整し、確率の高い球を選択して投げていることが評価されています。また、試合の流れに応じて自信を持って投球を行っていることが、彼の成功に寄与しています。彼の投球内容や試合でのパーフォーマンスに加え、家族からの応援や、試合後のメッセージなど、外部からのサポートや影響力も大きいと考えられます。
このように運に恵まれて勝ち星を挙げている赤星投手ですが、チームのひどいエラーが気になります。エラー数には注意が必要です。ヤクルト17 巨人15 中日22 DeNA17 広島9 阪神16。広島初戦の増田陸のファーストフライ、ピッチャーフライの二度の落球はいくら「フライが苦手」(本人談)とはいえ、プロのプレーではありません。キャベッジの落球や打球後逸のエラーは昨年からすでに織り込み済みです。5月8日の中日戦も悪送球から大量点を献上しています。9日もおよそプロとは思えないお粗末な本塁の挟殺プレーから失点しました。すぐ目の前にいる走者にタッチすればいいのに追いかけ回してキャッチボールをして、走塁妨害。一体何を考えているのか?「基本のキ」を疎かにしていると、運の女神も逃げていってしまいます。昨年のエラー数No.1で、守乱から失点するのが巨人の常道でした。
その後リリーフで打ち込まれて1敗を喫しましたが(2勝1敗、防御率2.52)、5月5日「こどもの日」東京ドームで、ヤクルト戦に今季初先発した赤星投手は、5回3安打無失点で昨年6月29日のDeNA戦以来、310日ぶりの白星3勝目を挙げました。今季9試合は全て救援登板だったために63球で降板しましたが、好調ツバメ打線の勢いを止め、想定を上回る快投を見せ「中継ぎの気持ちで1イニングずつ投げた」と胸を張りました。これでヤクルト戦は昨季から自身4連勝です。果敢に内角をシュートで攻めたのが良かったように思いました。多少甘く入っても打ち損じてくれました。内角のシュートが効いていたのでしょう。5回無失点で降板した時には「なぜ?続投させないのか?」と思いましたが、まだまだ阿部監督の信頼がないのでしょう。「球威が落ちたように感じたので替えた」「次も行ってもらう」と。試合後のお立ち台では「こどもの日」企画として小学生がインタビューしました。「コントロールを良くするにはどうしたらいいですか?」と問われ「家の手伝いをしたらいいと思います」と回答し、東京ドームの大爆笑をかいました。「一番オモロイのは優志」と同僚たちが証言します。
以下、赤星のヒーローインタビューです。チーム一のギャグのセンスの持ち主だそうです。実はこれは冗談ではなく、こういう気持ちで生活することが、運を呼び込むことにつながるのです。
―投球を振り返って。
「1イニングでも多く0で抑えることを目標にしていたので、なんとか抑えることができて良かったです」
―先発では今季初登板、どんな気持ちで投球したか。
「とにかく自分のピッチングに集中して投げました」
(ここから小学6年生の少年がインタビュー)
―投球のコントロールをよくするにはどうしたらいいですか。
「家の手伝いとかをして、したらいいと思います」(大爆笑)
―大きな割り算を得意にするためにはどうしたらいいですか。
「先生の話をしっかり聞いて家の手伝いもしたらいいと思います」(さらに大爆笑)
―ファンの子供たちへ。
「これからもジャイアンツの応援と、お父さんお母さんのお手伝いをよろしくお願いします」
その後、大城卓三捕手が、ヒーローインタビューで子どもから質問を受け、さらに球場を沸かせました。両軍無得点の4回にチーム初安打となる先制3ランを放った背番号「24」。お立ち台に上がると「詰まり気味だったんですけど、自分も入ると思って走ってました」と試合を決めた一発を回想しました。「こどもの日」ということで、インタビューの途中からは小学6年生の少年が大城へ質問。「チャンスの時はどういう気持ちで打席に入っていますか?」と聞かれると「積極的にというのを心がけて。やっぱり積極的に行ったときは結果が出てるかな」とアドバイスを送った。ここで少年は続けて「足が速くなるためにはどうしたらいいですか?」と質問。まさかの展開に球場には大笑いが巻き起こり、大城本人も苦笑い。決して足が速くない“打てる捕手”は、数秒ほど考えた末に、赤星の発言を踏まえ「そうですね…お母さんお父さんの手伝いをすれば速くなると思います」と答えて、スタンドはほっこりした雰囲気に包まれました。♥♥♥
次の一節をお読み下さい。最近読んだアメリカの悩み相談の英語です。
When I ask David for help, he says he’s exhausted and reminded me that he’s the one working full time. The thing is, I’m exhausted, too.(デビッドに助けをお願いすると、自分は疲れていると言って、フルタイムで働いているのは自分だと主張します。問題は、私も疲れているのです)
The thing is, …は、英語でとてもよく使われる口語表現で、主に話の前置き(導入)として使われるフレーズです。直訳すると、「その事は…」ですが、実際には次のようなニュアンスを持ちます。
・本題に入る
・言いにくいことを切り出す
・相手の期待と違うことを説明する
・理由や背景を述べる前置き
日本語にすると、「実はね…」「というのも…」「問題はね…」「その…(ちょっと言いにくいんだけど)」「(あまり言いたくないけれど)実はね」「問題はそこなんだよ」「大切なのはこういうことなんだ」と核心に触れる際に使われる非常に便利な決まり文句です。上の文で、デビッドは「自分はフルタイムで働いているから疲れている(だから手伝えない)」と主張しています。それに対して話者は“The thing is…”を使って「(デビッドはそう言うけれど)実際のところ、私だって疲れ果てているんです」と、相手の言い分を認めつつも、見落とされている重要な事実(=自分の疲れ)を対比させて強調しています。いきなりI’m exhausted, too.と言うと、相手の言い分を否定しているように聞こえます。そこで“The thing is,”を挟むことで、対立を避けつつ、自分の立場も理解して欲しいというニュアンスを作っているわけですね。
直訳すると「問題(重要な点)は〜だ」ですが、実際にはもっと柔らかく、「実はね、〜なんだ」「要するに、〜ということなんだけど」「ここで大事なのは、〜なんだ」といったニュアンスになります。
■ 働き(どんなときに使うか)
主に次のような場面で使われます:
① 言いにくいことを切り出す→相手に少し伝えにくい内容をやんわり導入する
“I’d love to go, but the thing is, I have to work early tomorrow.(行きたいんだけど、実はね、明日朝が早いんだ)
② 問題…・言い訳・説明を始める→理由や背景を説明するとき
“The plan sounds great. The thing is, we don’t have enough budget.”(計画は素晴らしく聞こえる。問題は、予算が足りないことだ)
③ 話のポイントを強調する→重要な点をまとめる
“I know it’s cheap. But the thing is, we don’t actually need it.”(安いのはわかってる。でも重要なのは、僕らはそれを必要としていないってことだよ)
■ ニュアンスの特徴としては
カジュアルで会話的/少し「間」を作る感じ(考えながら話す印象)/相手に配慮しつつ話を切り出す
■ 他に似た表現との違い
Actually, …:「実は(意外かもしれないけど)…」単に事実を訂正・補足
The point is, …:「大切な点は、…」「要は、…」 論点・要点を明確に示す。より論理的・強調が強い
The thing is, …:やや柔らかく、人間的・会話的
To be honest,… : 「正直なところ、…」
The thing is, …は、話しにくいこと・重要なことをやわらかく切り出すクッション表現として覚えると自然に使えます。「ちょっと言いにくいことを切り出す前のクッション」だと思うと理解しやすいでしょう。文頭で使うのが一般的ですが、本来はThe thing is that…と接続詞thatを補うこともありますが、口語ではほぼ100%省略されます。またThe thing is, …と言った後に一瞬「タメ」を作ることで、より「今から大事なことを言うぞ」という雰囲気が出ます。『ライトハウス英和辞典』(第7版)ではこの句を次のように記述しています。♥♥♥
[前の文を受けて]S その理由は、実は;問題は
“Why didn’t you do your homework?” “I was going to, The thing is, I had a terrible headache.”(「どうして宿題をしなかったの?」「するつもりだったんですが、実は頭痛がひどかったんです」)
2月11日建国記念の日に、アパホテルを日本最大級のホテルチェーンに育て上げた創業者の元谷外志雄(もとやとしお)会長が82歳で逝去されました。

▲アパホテル金沢駅前

▲アパホテル新宿御苑前
元谷氏が1984年に金沢片町で第一号ホテルを開業した当時、日本のホテル業界は観光地中心の展開が主流でした。しかし同氏は、ビジネス客をターゲットにした都市型ホテルに特化する戦略を打ち出し、駅近の立地、コンパクトな客室、合理的な価格設定、当時としては異端とされたこれらのコンセプトが、後の出張文化の変化と完全にマッチしたのです。現在(4月28日時点)では1,148カ所、14万8,077室を超える日本最大級のホテルチェーンに発展しています。現在でも次々と新ホテルが開業しており、過去最高売り上げ、過去最高利益を更新しています。重要なのは、トレンドを追いかけたのではなく、自ら市場を創造した点でしょう。これは今の時代の経営者にも通じる視点です。
元谷氏の真価が最も発揮されたのは、2008年のリーマン・ショックの時でしょう。多くの企業が投資を控え、不動産価格が暴落する中、「千載一遇のチャンス」と捉えて積極的な物件取得に動きました。周囲からは無謀との声もありましたが、結果的にこの判断が現在のアパホテルの優位性を決定づけることになります。バブル崩壊、ファンドバブル、リーマンショックという三度の経済危機を、すべて成長の機会に転換してきました。元谷氏から学べる最大の教訓は、「市場が悲観に包まれた時こそ、冷静に本質を見極める」という姿勢です。リーマン・ショック時、同氏は不動産の価値そのものが消えたわけではないと考え、一時的な価格下落は、むしろ優良物件を適正価格で取得できる好機だったわけです。この判断の背景には、ホテル事業の本質的な需要への確信がありました。また、妻の芙美子氏との二人三脚の経営スタイルも印象的でした。芙美子氏が広報や対外活動を担い、外志雄氏は戦略と実行を担うという役割分担は、パートナーシップ経営の理想形でしょう。芙美子さんは個性的なファッションで歌手活動も行うなど、メディアに多く露出し広報活動を担う一方で、外志雄さんも安倍晋三元首相らと親交を深めるなど、政財界に幅広い人脈を持ちました。また、同社で発行する月刊誌などで、保守的な思想を発信するなどしたことでも知られます。事業家としての顔とは別に、元谷氏は藤誠志のペンネームで言論活動にも力を注いでいました。「真の近現代史観」懸賞論文を主催し、田母神論文問題でも知られるように、保守派の論客としての一面も持っていました。月刊誌『Apple Town』へ社会時評エッセイを32年に亘って掲載したほか、『報道されない近現代史』、『誰も言えない国家論』、『誇れる祖国、日本』、『【増補版】理論 近現代史学』等の著書を出版し、日本人が自虐史観から脱し、正しい歴史認識を持ち、国に誇りを持てるよう、啓蒙活動を続け、公益財団法人アパ日本再興財団の代表理事として、「アパ日本再興大賞」表彰制度、「勝兵塾」を主催してきました。自分の信念を明確に示し、それを実践し続けました。経営者として成功した後も、自らが正しいと信じる歴史観や国家観を発信し続けたその姿勢は、単なる商売人ではない、真の事業家たる矜持だったのでしょう。ホテルの部屋には著書が置いてありました。
元谷氏の功績は、単に大きなホテルチェーンを作ったことではありません。誰もが守りに入る局面で攻めに転じる勇気、自分の信じる戦略を貫く胆力、そして長期的な視点で事業を育てる忍耐力。これら全てを体現した経営者でした。「先を見る目」がありました。訃報に接し、改めて「経営者は常に市場の先を読み、逆境こそをチャンスに変える覚悟が必要だ」という言葉を噛み締めていました。元谷さんの残した名言をいくつか挙げてみましょう。
◎願望は自ら実現する
◎能ある鷹は爪を出せ
◎仕事を遊びに遊びを仕事に
◎出来ない約束はしない、した約束は守る
◎現状を肯定、持てる武器はすべて使い人生を勝ち取れ
◎若さは武器、若さの中に無限の可能性がある
◎勝ち取った物だけが残る与えられた物はいつか奪われる
◎人生どの一瞬を切り裂いても悔いのない、そんな人生を歩いてみたい
◎自分に見栄を張って生きろ
◎全体の中に部分があり、部分を集めても、全体とはならない
◎始める時から、終る時を考えろ
◎情報は発信する人に集まってくる
◎最善の一瞬の選択を求めて、百年常識を養う
◎常識を磨き人間力を高め誇りの持てる決断を
◎人間どう考えるかで人生は決まる
◎未知の領域への挑戦、それはロマンである
◎世の中、とにかく不条理なものである、めげず臆せず王道を歩め
◎自分に納得できる人生を歩め
◎全力で得た結果は総て最高である
◎全体を俯瞰して、部分を洞察せよ
◎気合い入れて、格好つけて、意識して生きろ
◎幸運は喜びと感動を顕にする人に廻って来る
◎時を選び勝てる所で勝て
◎劇的に興奮と感動の人生を演出して生きろ
◎好奇心があれば未来がある
◎今日の全力が明日の最善を作る
◎計画とは将来に対する意志である
◎演ずる自分を、監督する自分が評価できる人生を
◎全力で闘えば負けたとしても誇りは失われない
◎考えて、準備して、そして嵐を起こせ
◎常にドラマチックに年毎に楽しくなる人生を
◎誠実に忍耐強く勇気を持って決断実行
◎負けは小さくとどめ、勝てる時に大勝を目指せ
◎過去を知り現在を解析すれば未来が見えてくる
◎運命ではない意志の力で人生を勝ち抜け
◎人生は短い未来を闘う過程を楽しみ時間に負けるな
私は職業柄、全国を飛び歩くことが多いのですが、大都市部では「アパホテル」に泊まることも数多くあるんです(大半は、その町一番の老舗ホテルに泊まりますが)。結構気に入って会員になっています。「アパホテルは部屋が狭い」とよく言われることがありますが、これは敢えて意図的に小さく作っているのです。だからこそ、料金が安くなり、面積当たり、あるいはゲスト1人当たりの環境負荷が小さくなるんです。炭酸ガスの排出量は、一般的な都市型ホテルの3分の1です。「アパホテル」は、シングルルームでもベッドは横幅140cmあって、寝心地も大変よく、テレビは50型と大きく見やすいんです。枕元に、照明等のスイッチや携帯電話の充電コンセントなど必要な機能をコンパクトにまとめてあるので、ベッドに寝ながらにして必要な操作が全部できるように作られています。浴槽は卵形でゆったり入れるのに(ビジネスホテルのお風呂は好きになれない八幡です)、湯量は通常の80%で済みます。浴槽に湯を入れるのも、一定量溜まると給湯が止まる定量止水栓で、湯をあふれさせるムダや心配がありません。中でも特筆すべきは、置いてある歯ブラシも超高級品で、私の一番のお気に入りなんです。⇒私の歯ブラシの感想はコチラをご覧ください
ちなみに「アパホテル」の名称については、当時の社長の元谷さんが、米国ランドー社に依頼して出来上がったものです。Always Pleasant Amenity(いつも気持ちのよい環境を)の略で、環境への配慮もあり、Aから始まる覚えやすい親しみのある名前だし、英文字3文字で海外からのお客さんにも親しみやすいだろうということで一発で決まりました。平成9年には社名を「アパ(APA)グループ」に変更しています。「ジャパン(JAPAN)の真ん中」という意味です。「日本には優れたものがたくさんある」「誇れる国・日本を再興しよう」と訴え続けられました。
1971年、夫・外志雄さんが「信金開発株式会社(現アパグループ)」を立ち上げます。起業当初、第一子を妊娠中だったが、経理や事務職をして手伝い、出産後は営業にも出ました。すると営業成績は、トップに。実力で取締役となります。その後、営業手腕を買われ、「ホテルでお客をもてなすのは女将や」と、代表である夫に指名され、1994年、アパホテル社長に就任します。そして、あの有名な元谷さんの広告が誕生するのです。「史上最悪の広告」「やめてくれ」「公共の福祉に反する」などと、ごうごうたる非難の抗議に沸きましたが、逆にそれだけの反響があった証拠で、世の中に浸透した結果と思った、と言います。元谷芙美子社長は派手な衣装に身を包み、「私が社長です」のコピーをひっさげ、看板や新聞広告や中吊り広告に一斉に登場します。あまりのインパクトに、「もっと違う人を使えや!」と、本社には苦情が殺到したらしいですが、元々それが狙いです。「アパホテル」の認知度は一気に上昇しました。「社長を広告塔にする」ことで、コスト削減(タレント使うとお金がかかる)&スキャンダル防止(なんせ自分ですから管理しやすい)という理由で、この広告戦略を取ったそうです。それが大ヒットします。

「アパホテル」は、ホテル業界では、種々の先駆けのサービスを提供することにより、他社との差別化を図ってきました。「ウィンドウズ95」が発売された平成7年にホテルのネット予約をスタートさせています。駅から徒歩3分以内で、宿泊料も安く、大浴場もあって、朝食が美味しい。評判もあって、着実に人気を重ねてきました。2007年、耐震強度不足問題が発覚した際の、複雑な心境も語っていました。京都のホテル2棟で勧告を受け、ホテルは営業停止。マスコミからは叩かれ、大騒動になりました。銀行からは融資の全額返済を要求されましたが、マンションの建設予定地をいくつも売却し、何とか危機を切り抜けます。その時「リーマン・ショック」が起き、資金繰りのために土地を売り余っていた資金で、今度は、都心の一等地を底値で買い入れて、ホテルを次々に作ります。これが現在の大躍進へのきっかけとなったわけです。今も、全国に次々と新しい「アパホテル」が誕生しています。
二人の息子の母親である元谷さんの教育方針は、「勉強するな」です。難関大学に行っても大成しない。勉強はただ記憶力の強い子を作るだけ。トップの経営者になるには、人を引きつける魅力と精神力が必要だ、と教えてきた、と言います。一方、妻としての元谷さんの顔は…「夫婦喧嘩はしない」というもの。夫の意見には反対せず、夫を最大限に立てる。夜は「居酒屋ふみふみ」を開店し、手料理と、焼酎で夫をねぎらいます。仕事もプライベートも全力投球。小さな体から溢れ出る元谷さんのチカラの源が語られました。私が元谷さんの哲学で感心したのは、次のものです。
二兎を追うものは一兎も得ずと言いますが、一兎だけを追っていたら、どんなにがんばっても一兎しか得ることはできません。だから、たとえ難しくても二兎を追ってみる。そうすれば、二兎をを得るチャンスが広がります。 ―元谷芙美子『強運』(SBクリエイティブ、2017年)
そういえば、私が赴任した頃の松江北高は「二兎を追え、三兎を追え!」と、生徒たちに檄を飛ばしていましたっけ。最近では、そんな言葉を聞くこともなくなりました。新型コロナウィルス騒動が起こると、いち早く感染軽症者の受け入れを表明したのも「アパホテル」でした。懐が広いと感じます。世界的にも観光産業は新型コロナウィルスによる大打撃を受けておりますが、「アパホテル」では部屋を求める方がいる限り営業することが「ホテルの使命」と考え、休業せずに営業を続けました。また、安倍首相(当時)より「新型コロナウィルスの軽症者の受け入れ」要請の電話があり、即座に全面的に受け入れる意向がある旨を伝え、ホテル業界のリーディングカンパニーとして医療崩壊を防ぐために側面から貢献したいという一念から、いち早く受け入れを決めました。素晴らしい決断でした。
2020年の2月に、金沢市の「武家屋敷」を案内してもらっていた時に、ここが元谷さんの大邸宅だよと教えてもらいました(写真下)。♥♥♥

▲元谷邸
今からもう30年以上も前のことです。『ライトハウス英和辞典』(研究社)の第2版の改訂準備作業をしていた1988年頃の話で、当時、英語のelderlyという単語のゲラに《60歳前後》という注記が入っていたんです。これに対して、私たちの編集委員のMary Althaus教授(津田塾大学)から、「30年前であれば、60歳はelderlyであっただろうが、現在はもう10歳~20歳は年上を言う言葉であろう」という書き込みがありました。これは当時の私にとって新発見でした。すぐに私たちの編集顧問の故・ボリンジャー博士(Dwight Bolinger)に確認をとったところ、面白いエピソードを伺うことができました。平均寿命が65歳の時なら、60歳をelderlyとしてよいだろうが、現在の実態はそうではないことに注目すべきだ。博士が71歳の時、夜ジョギングしていたところ、警察官に呼び止められたというのです。おそらくは誰かに追いかけられていると心配に思って、この警察官は“elderly gentleman running”に対して、驚きを表したのでしょう。old と呼んだのでは失礼だろうから、丁寧にelderlyと呼ばれたのだろうが、71歳で“elderly”の範疇に入ると知って、ちょっと驚いた、と博士はおっしゃっておられました。結論的には、アルトハウス先生のご指摘に同意され、”You are as young as you feel.”だから、特定の年齢は明記しないほうがよい、とのアドバイスをいただきました。当時、松江北高のALTだったジェーン・ハンフリー先生(オーストラリア出身)も当時、個人的意見としながらも、70歳プラスと思う、と述べられました。ALTのエドワード先生とこの話題を話していて、「自分は75歳以上くらいだと思う」との意見でした。 “It is considered more polite to use elderly instead of old when describing a person : an elderly gentleman” (Cambridge Academic Content Dictionary)ということで、「しばしばoldに対する遠回しな語として用いられる」(『ライトハウス英和辞典』)としておきました。これが、今から30年前の実態でした。『ライトハウス英和辞典』(第6版)をお持ちの方は、私の書いたold/elderly/agedの「類義語」欄をご覧ください。しかし、あれからずいぶん時が経ちました。elderlyの実態は、当時からずいぶん変わってきたように感じています。
尊敬する竹岡広信先生の『改訂版LEAP必携英単語』(数研出版、2024年)のelderlyにも 「年配の、年老いた(old, aged)の丁寧で遠回しな表現」とあります。残念ながら、これは現在の実態にあっていません。理由はelderly が「年齢」よりも「状態(弱っている・介護が必要)」を連想させる語になってしまっているからです。
現在、アメリカでは、この問題は実にやっかいなようで、ニューヨークタイムズ紙が69歳の女性をelderlyと呼んでいます。別のアメリカの新聞は70歳をelderlyと呼んでいます。71歳の女性をelderlyと書いたところ、「あり得ない」という読者からの抗議の投稿があったそうです。ある読者は「自分は70歳だが、elderlyと感じることは絶対にない。elderlyは、少なくとも80歳以上、いや95歳もあり得るだろう」と述べました。どうやら20世紀前半にはold に対する婉曲語としてelderlyは受け入れられていたのですが、現在ではthe deaf やthe disabledなどと同じように、“politically correct”でないと受け止められているふしさえあります(cf. Collins English Dictionary)。
Many people now think that this word is offensive but it is often used in talking about policies and conditions that affect old people [Macmillan English Dictionary for Advanced Learners(2007)]
elderlyには弱々しく(weak)、自立できない(unable to care for oneself)、衰えている(frail)という含蓄が感じられるというのです。『ウィズダム英和辞典』(第四󠄁版、三省堂、2019年)が「もともとはoldの丁寧語であったが、現在では失礼な表現とされる場合もある」と、『グランドセンチュリー英和辞典』(第4版、三省堂、2017年)が「しばしば遠回しにいう時にoldの代わりに用いられるが、失礼な言い方だと考える人も多い」と、『ジーニアス英和辞典(第6版、2023年)が「元来old, agedの遠回し[ていねい]な表現だが、最近は失礼に響くと感じる人が多い」と記述しているのは、ここら辺を踏まえての観察と思われます。時代と共に英語が変容していく好例ですね。
さて、ここからが今日のテーマです。最近のelderlyの使われ方を観察していると、事態はさらに進んでいる印象を受けています。「Alpha」(7月17日号、2020年)の、James Tschudy先生の連載記事 “Odds & Ends”(やさしい英語の正しい使い方)に、面白いエピソードが出ていました。先生より8歳上のお姉さんがテレビで交通事故のニュースを見ていたところ、アナウンサーが“An elderly man of 70 was involved in an accident on Highway 50.”と述べたそうです。お姉さんは「ちょっと待って。私は70歳だけど、elderlyじゃないわ」と思わず口にしたそうです。お姉さんのelderlyという語に対するイメージは“old, weak, unable to care for oneself”だそうです。自分はまだ健康で、活動的なので、elderlyじゃないと言うのです。チューディ先生の語感も、お姉さんと全く同じだと言っておられました。もともとは丁寧語として登場したelderlyですが、現在はその使用には注意が必要です。ニュース記事で70歳の男性を“an elderly man”と書くのは、記者が敬意を払ったつもり、または(若者ではないという)客観的事実のつもりであることが多いのです。しかし、読者にとっては「俺をヨボヨボ扱いするな!」という侮辱に聞こえてしまうのです。70歳でも元気ならelderlyと呼ばれると反発されやすく、80歳でも元気なら避けられることもあります。年齢だけで決まる語ではなくなっており、当事者の感覚とは大きくズレているのです。
かつてはold(老人)を避けるための「丁寧な婉曲表現」だったelderlyですが、現代のアメリカ英語では、「自立した生活が困難で、心身ともに衰えた高齢者」というネガティブな含みが強まっています。丁寧語から失礼な言葉へと転落していく現象です。現在の英語圏では、elderlyは年齢を示す中立語ではなく、弱々しさ・依存・衰えを連想させる語として忌避される傾向が強く、一般的には使わない方がよい語になっています。ネイティブスピーカーがelderlyという言葉から連想するのは、以下のような人物像です。
●Fraility(虚弱):足腰が弱く、杖や歩行器が必要な人。弱々しい。衰えている。
●Dependency(依存):介護を必要としたり、一人で身の回りのことができなかったり する人。自立ができない。他人の助けが必要。
●Vulnerability(脆弱性):犯罪の被害者になりやすい、あるいは病気のリスクが高い 「弱者」としての高齢者。体力・判断力が落ちており、社会的に保護の対象。
年齢で区切る明確な基準はすでに崩れており、政策立案や医療の文脈で高齢者集団を指す時に限って使われることはあるものの、個人を指して“an elderly man/woman”と言うのは避けられています。国連では1995年にelderlyを避け、older personsを推奨しています。American Geriatrics Societyもelderly, seniors, the agedを使わないように勧告しています。National Institute on Agingもelderlyは「否定的なステレオタイプを助長する語」として使用を避けるように指示しています。相手を不快にさせず、かつ適切に年齢層を表現するために、現在は次のような言葉が選ばれています:seniors/ senior citizens/ older adults/ older people/ people in their 80s/ active seniros
私たちの『ライトハウス英和辞典』(第7版、2023年)の次の記述の下線部分は、書き換える必要があると私は感じています。♥♥♥
【語法】 しばしばoldに対する遠回しな語として用いられるが、失礼と感じる人もいる。
【類義語】 中年以上の人に用いられる語で、しばしばoldやagedの婉曲表現として用いられるが、現在では失礼と感じる人もいる。