『Bun2』

 私は文房具が大好き人間(文房具の八ちゃん)で 、お気に入りの東京・銀座「伊東屋」へ出向く度に、隅から隅まで歩き回ることを何よりも楽しみにしています。昨年8月には、間部香代『銀座伊東屋の仕事 文房具専門店クロニクル』(グラフィック社、2,090円)が出版され、創業120年の文房具専門店が明治、大正、昭和、平成、令和、と時代と共に歩み、店頭に並べられた商品の変遷や一つの文化史などを物語っていました。私たちのクリエイティブな生活を支えてきた文房具にまつわる仕事と人の話で、とっても面白かったです(写真下)。

 最近では、『文具屋さん大賞2025』(扶桑社ムック)という最新文房具(801点)のランキング雑誌が登場して楽しく読みました。毎年この時期に楽しみにしているムック本です。

 さて今日のテーマ。偶数月一日に発行される文房具情報フリーペーパーマガジン『Bun2(ブンツウ)』を楽しみにしている一人です。この雑誌は2004年10月に創刊され、20年以上続いている文房具情報誌です。私は創刊時から定期購読をしていました。A4サイズのフルカラーで、配布部数は約12万5,000部。文房具の最新トレンド情報を知るためには欠かせない媒体であり、毎号出るのを楽しみに待っているんです。また、文房具の新製品情報だけではなく、他のコラムも面白く読み耽ってしまいます。大きな文房具店では、無料で配布していますが、すぐになくなってしまうようです。私は会社から長年定期購読をお願いしていましたが、松江・田和山「ぶんぶん堂」(今は閉店)で無料配付していたので、そちらでもらうことにしました。ところが、私が定期購読を打ち切った途端に、このお店が潰れてしまいどうしたものかと思案していたら、末次本町の老舗文具店「原文パピロ21」のレジでもらえることを発見して、今日も最新号をもらってきました(写真下)。

 特集記事も連載も広告欄でさえも、全て文具であふれています。もはや無料で読める業界紙で、大きな見開き広告を見るだけで、文具好きの八幡はニヤニヤしちゃいます。気になっている文具がいつも表紙に取り上げられており、楽しみにしている特集記事では、「あ、これ気になっていたヤツだ」という文具がいつも特集されているんです。連載記事も充実しており、海外の文具事情も知ることができます。文具王・高畑正幸さんによる専門的なレビューなど、実に個性豊かな記事が連載されています。書いている人たち皆が文具好きだというのがビンビン伝わってきますし、自分の関心の薄い分野のレアな新商品などを知ることもできてとても楽しいです。普段生活していると、文具の広告ってなかなか目にする機会がないんですよね。でも、文具好きとしてはやっぱり最新情報を手に入れたいし、きれいに撮られた写真とか眺めたいじゃないですか。「この商品はお客様のこんな声から生まれました!」「ここを工夫しています!」こういう情報って、なかなか消費者には届いてきませんので(メーカーはいつだって消費者の方を向いているはずなのにも関わらず)、この情報誌のおかげで「あ〜だから使いやすかったのか」とか、「お店では気にならなかったけど、ちょっと試してみようかな」っていう気持ちが生まれてきます。普段は触れ合うことの少ない、メーカーと消費者を繋いでくれる架け橋のような貴重な存在の情報誌です。 「文房具の八ちゃん」の貴重な情報源となっています。♥♥♥

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「今井書店松江本店」オープン

 実に7か月ぶり、待ちに待った今井書店の開店です。お客さんの声です。「やっぱり楽しみでしたよ。ちょっと休みの間はさびしかったですね」 「もうずっと待っていたのでオープンを。本だけじゃなくていろいろ楽しんで帰れるってところがいいんじゃないですか」

 本屋自体が、今までのマーケティングや店づくりに関してあまり関わって来なかったデジタルを上手に使って、そして大きなリアルの本屋と融合させることによって、山陰の地元の皆様にしっかり本を楽しんでもらえたらと思います。(今井書店・達山常務取締役)

 4月24日(木)、 松江市田和山町にリニューアルオープンしたのは「今井書店松江本店」です。この店は去年の9月まで「今井書店グループセンター店」として営業していましたが、約7か月かけて大規模改装し、「今井書店松江本店」として装いも新たに生まれ変わりました。鉄骨平屋約1,500メートルの店内は、えんじ色を基調に天井を吹き抜けにして開放感を演出しています。書店業界が苦境に立つ中での、大規模なリニューアルです。現在、国内の書店の数は約1万1,000店。ネット通販や電子書籍の普及などにより約20年でほぼ半減しており、山陰地方でも書店の閉店が相次ぎ、3割前後の市町村が新刊や雑誌を扱う本屋がない「書店ゼロ」の空白地域となっています。淋しいことです。

 開店日の10時過ぎにのぞいてみましたが、ものすごい人で賑わっていました。「すごせる書店」をリニューアルのテーマ(基本理念)として空間設計された店内は、これまであった天井を取り払って吹き抜けになっており、鉄骨がむき出しの広い空間になりました。中央にあったレジを隅に配置して通路を広くするなど、今まで以上に開放的な雰囲気になっています。また、背の高い書棚には鳥取県智頭産の杉を使用、本を使った照明器具など、インテリアにもこだわって、ぬくもりのある落ち着いた空間を演出しています。店内に並ぶ書籍の在庫数を19万冊から22万冊に増やしたほか(書籍のタイトル数も95,000タイトルから125,000タイトルに拡充)、新刊以外の文芸書や実用書、文庫といったジャンルを強化、品揃えを充実させました。イメージカラーも、より安らぎを感じるえんじ色に、ブックカバーも刷新されました。店内は本だけでなく、文房具も数多く取り扱い、こだわりの雑貨や食料品,調理器具も並ぶほか、5月20日には窯で焼いたナポリ風ピザやパスタなどが楽しめるカフェ(約110席)もオープンする予定とか(IAMCoffee Pizzeri & Cafe)。Wifi・電源を完備したコワーキングスペースも設置され、仕事や勉強、交流の場としても活用できそうです。地元の生産者やクリエーターと協力してマルシェなどを毎月開催し、今後はペット同伴可能なソファ席も設けると言います。「暮らし」と「本」をつなぐ場を作ることで、本を売るだけではない書店を目指しているのでしょう。この書店では、2024年4月に専用アプリを導入。書籍の予約やネット購入などITを活用したサービスも提供、新しい書店の形を模索しています。

 あまりにも人が多くて早々に退散しました。レジに並ぶ人の大行列は見ていて気の毒でした(相変わらずサービスの読みが甘い)。学生時代からお世話になっており、教員になってからも長いお付き合いをいただいて感謝している今井書店ですが、最近のサービスの変わり様には憤りに近いものがあります(⇒詳しくは私のブログ「今井書店がおかしい」をご覧ください)。今回は人が多すぎて、隅々まで詳しく見て歩くことはできませんでしたが、「あ、いいな」と思った点は、①朝の9時から開店してくれること(~夜10時)。②文房具(特に私に貴重な筆記用具類)の在庫が充実していそうなこと。③デスクスペースがあること(どのような形で解放されるのかは不明ですが)くらいでしょうか。ガッカリだったことは、専門書が全然ダメ。学習参考書も相変わらずダメ。店員さんもアルバイトが多いなという印象でした。

 私が学生時代には殿町にあった「今井書店本店」2階には、洋書のコーナーがあり、新しいペーパバックが入荷していました。英語の専門書も結構充実しており、学校帰りには、バスを途中下車して寄り道したものです。島根大学の前󠄂にあった「園山書店」にはそれこそ専門書が大量に入荷し(洋書も)、新刊のペーパーバックも絶えず入荷していました。私はこのお店でアガサ・クリスティ(Agatha Christie)のペーパーバックを全冊揃えています。大学生が勉強しなくなったのでしょう、この書店も早々に潰れてしまいました。♥♥♥

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広島女学院大学経営から撤退へ

 学校法人「広島女学院」(広島市東区)は3月18日、広島女学院大学の管理主体を、京都市を拠点とする学校法人「YIC学院」に2026年度から移管する方針を明らかにしました。文部科学省に同日、移管計画の認可を申請しました。ビックリです。

 広島女学院大学は1886年に開かれた私塾・広島女学会が前身で、広島で戦後初の私立大学として認可されて、1949年に4年制大学として開学し教育や研究に取り組んできました。人文学部人間生活学部があり、昨年5月1日の時点で計約780人が在籍しています。2月末の学校法人理事会で、移管の方針を決めました。大学敷地内にある広島女学院ゲーンス幼稚園の管理も移します。一方、同中学・高校(広島市中区)は引き続き運営します。

 大学経営からの撤退の背景には、若い世代の「女子大離れ」「少子化」の加速により、慢性的な定員割れによる学生数の激減による経営難があります。広島女学院大学によると、入学者は2019年度以降は定員(330人)割れが続き、24年度は136人。「少子化」だけでなく、「共学志向の傾向」が強くなっていることなどが要因とみられます。2015年5月1日時点での大学(学部)在籍者数が1,509人だったのに対し、2024年5月1日現在は778人です。この10年間でほぼ半減していますね。学生は「定員割れの問題もあるし、最近ひどいので仕方ないかなと思う。」 広島県の湯崎英彦知事は、「学校事業が受け継がれるのは高旺盛などの多様な進路の確保に繋がるものになると思うし、そうなってほしい」と述べています。

 移管先のYIC学院は、京都市内で専門学校や日本語学校を運営しています。大学の組織体制や教育課程などは当面、現状を維持しますが、専門学校の実践教育のノウハウを生かして、共学化の可能性をはじめ、多様化する学生ニーズへの対応を検討するといいます。文科省が移管を認めれば、9月に将来的な構想案を発表する方針といいます。

 中国地方では、2025年度以降学生の募集を停止したのが、就実短大(岡山)美作短大(岡山)安田女子短大(広島)です。また、比治山大学(広島市東区)が、短期大学部について2026年春の入学者を最後に募集停止し、四年制の現代文化学部に統合・再編する構想を発表しました。四年制志向の高まりなどを背景に、近年は定員割れが進んでいました。

 私が教師としてまだ若かった頃は、国公立大学よりも私立大学の方が競争率が高く、入るのが難しい時代でした。当時は、広島修道大学の方が広島大学より難しかったことを覚えています(修道大に落ちて広大に合格!)。その頃は、広島女学院大学も名門大学で、英語の勉強をしたい生徒達に薦めていたものです。結構レベルの高い大学だったんですが、時代がずいぶん変わったんですね。広島ホームテレビのニュース番組を見ていて、意外なことを知りました。広島女学院大学「スキップ発祥の地」なんだそうです。明治34年、広島県広島市東区の広島女学院大学へ来ていた外国人教員マコーレー先生がスキップを教えた。日本の幼児がおとなしく、もっと活発に動くことを教えようと、幼児教育にスキップを取り入れた。それが全国の幼児教育へ広まったものだそうです。大学撤退を受け、同じ系列である名門の進学校、広島女学院中学高等学校にどんな影響が及ぶのかが心配です。

 1993年のピーク時には国公私立合わせて595校、学生53万人が在籍した短大も、1990年代以降、女性の大学・共学志向の高まりを受けて、大学に移行する短大が急増しました。2024年度には297校に半減、学生数は8万人にまで現象しています。学生募集を停止した短大は2025年度23校、2026年度21校、2027年度1校と急増しています。私立短大の約7割の収支が赤字です。2024年度に文科省が始めたペナルティ措置「3年連続で学生数が収容定員の8割未満となるだけで、原則、国の奨学支援新制度(低所得者向け支援)の対象外」が撤退を加速させたのは間違いないでしょう。少子化が進む中(2024年の18歳人口は約106万人で1990年代前半の半減)、現在私立大学の約6割が定員割れをおこしており、特に地方は厳しい状況です。にもかかわらず、2024年時点で大学は813校で,1992年の約1.5倍になっています。みんなが大学に入れる時代を迎えているのです。

 つい先日、今度は京都ノートルダム女子大学が、2026年度以降の学生募集を停止すると発表しました。現在は計4つの学部・学環に約800人が在籍していますが、本年度入学した学生が卒業する2029年3月をめどに閉学する見通しです。創立は1961年、カトリック精神を基盤に英語、国際教育などを重視してきた名門です。2021年以降は定員割れが続いており、入学定員330人のところ、2024年度の新入生は186人。2025年度は169人でした。2026年4月に予定していた人文学部言語文化学科も開設を取りやめます。定員割れの私立大・短大のこのような動き(撤退・再編)はまだまだ続くものと思います。文科省も破綻リスクがあり経営難で、経営改善や規模適正化を促す学校法人を100法人ほどに拡大して指導を強化するとの報道も流れてきました。

 最近、財務省が、一部の私立大学の教育内容を厳しく指摘して、私学助成金の見直しを提唱しました。定員割れに陥っている私立大学の授業例として、四則演算や方程式の取り扱い(数学)、現在形と過去形の違い(英語)などを挙げ、これじゃまるで義務教育のようだと批判し、大学教育の質の評価が必要だという考えを示しました。がこれに対して、文科省は、「目指すべき方向は同じ」としつつも、「定員割れしていたり、基礎的な学びを取り入れたりしている大学の教育の質が一概に低いとは言い切れず、一面的で粗い考えだ。学力の成長度や進路実績なども含めた評価が必要だ」と反論しました。現在、私学助成は大学588校に約2,860億円が投じられており、学生数や大学の規模に応じて配分されています。本来大学で行うべきレベルの教育水準に達してもいない低レベルの学生を受け入れていること自体が、大学で義務教育レベルの授業をせざるを得ない理由だと感じています。私が実際に目撃したある国立大学理系の授業は、松江北高一年生以下のレベルでした。二次試験に英語が課されないので全く英語の勉強をせずに入ってくる学生が多いことが原因と思われました。大学も全入時代を迎えており、自分で選り好みしなければどこかには入れる時代となっています。およそ大学とは呼べないようなお粗末なものがあることは、間違いのない事実です。♥♥♥

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11連休!

 公立・県立の高校に通う高校生のゴールデンウィークgolden weekは元々映画興行界の用語が起こりと言われますが、英米にはこのような習慣はありませんから「和製英語」で通じません。説明してあげる必要があります。日本に滞在経験の長い英米人はよくご存じで、私の知り合いのALTなどはよく使っています)は、2025年4月26日(土)から始まりました。今年度は4月28日が平日の月曜日、前半は登校日が多く、後半の5月3日(土)から5月6日(火)がGWです。今年は飛び石になっているために長い休みを取りづらい曜日の並びとなっており、なかなか旅行の計画が立てられないでいます。今年はどこにも行けそうにありません。私が通う勝田ケ丘志学館はカレンダー通りの授業で、教えては休み、休んでは教えるという生活です。ところがです。私が教えている勝田ケ丘志学館が入っている鳥取県立米子東高等学校は、「体験的学習活動等休業日」と称して、間の平日を全部休みにして、4月26日から(しかも25日は遠足)「11連休」になると聞きました。昨年度は10連休だったとのこと。「連休中は普段できないような体験的な活動を行うなど、時間を有意義に使いましょう。」(米子東高HP)生徒は大喜びでしょうが、こんなに休ませて一体どうするつもりなのでしょう?特に入学したばかりの一年生は勉強の習慣をつけるのに四苦八苦している最中のはずです。このツケは必ずどこかで払わなくてはならなくなることでしょう。卒業生に聞きました。「昨年の10連休は何をしてた?」――「テレビを見ていました」「ユーチューブを見てました」〔笑〕

 平成29年9月に学校教育法施行令が一部改正され、「家庭や地域における体験的な学習活動その他の学習活動のための休業日」を、各教育委員会で定めることが可能となりました。これを活用し、各県立学校の判断により連休の合間の日などを当該休業日とすることを可能とするほか、市町村教育委員会へも導入を働きかけることで、一部の県立学校、市町村立学校が導入しました。当該休業日当日は教職員の有給休暇取得も推進して休むことを可能にしています。「体験的学習活動等休業日」の狙いは下記の通りです。

1  体験的学習活動等休業日の趣旨
家庭や地域における体験的な学習活動等多様な活動の充実を図るためのもの。平成29年9月に学校教育法施行令が一部改正され、新たな休業日を定めることが可能となった。

2  導入のねらい
・児童生徒が保護者の方等と一緒に体験的な学習活動等に参加することを通じて、心身の健全な発達を一層促進する環境の醸成
・地域における保護者の有給休暇の取得の促進
・学校休業日の分散化

 「体験的学習活動」とは、自分自身が実際に経験し、学ぶ活動のことです。例えば次のような活動のことをいいます。

(1)生活・文化体験活動・・・(遊び、お手伝い、スポーツ、地域行事)

(2)自然体験活動・・・(登山、キャンプ、星空観察、動植物観察)

(3)社会体験活動・・・(ボランティア活動、職場体験活動など)

 「体験的学習活動等休業日」では、「家庭や地域での活動を通じて自ら学び、考える力を育みます」。実に結構なお題目です。しかし、私などには、業務に追われて、忙しさに疲れている教員が休むための施策としか思えないのですが…。年次休暇を取れば11連休です。最高ですね。私たちの時代にはあっても3連休程度で、その連休もこの時期部活動(ソフトテニス)の総体予選で全部潰れていました。時代が変わったんでしょうね。教員が楽をするとロクなことにはなりません。私が勤めていた学校が、業者模試を減らしたり、校内模試を減らしたり、伝統の「学問探求講座」を廃止したり、「寒稽古」を廃止したり、進路検討会の時間を大幅に短縮したり、全て「生徒のため」と称していますが、私に言わせれば「教員が楽をするため」です。そして楽をした分は必ずツケが回ってきます。「働き方改革」と称して楽をすることばかりに専心している印象です。私は「力を尽くして狭き門より入れ」といつも言っていました。無茶はいけませんが、無理はしないと結果は出ないのです。楽をして結果が残るのなら、苦労はしません。

 このゴールデンウィークに「ラーケーション」の活用が話題となっています。保護者の休みや都合に合わせて、子どもが平日に学校を休んでも欠席扱いとならない仕組みのことで、「学び」(ラーン)「休暇」(バケーション)を組み合わせた造語です。事前申請すれば、授業を欠席扱いとせずに休める仕組みです。かつては学校を休んで旅行や観光をするにはかなりの抵抗がありましたが、近年は「教室以外の学び」とやらの価値が広がっています。2023年に愛知県で始まり、熊本、茨城、山口、徳島などで導入しています。♥♥♥

▲どこにも行けない八幡はジバンシーのコーヒーカップでブルーマウンテンとCiistandのモンブラン

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建築家・安藤忠雄

 私は建築家・安藤忠雄(あんどうただお)さんの建築物が大好きで、全国の安藤建築を巡っています。最近では瀬戸内海に浮かぶアートな「直島」(なおしま)で、数々の安藤建築(地中美術館・ベネッセハウス等)をこれでもかというぐらい堪能してきました。安藤さんが建築に興味を持ったのは、中学2年生の時でした。住んでいた木造平屋建ての自宅を2階建てに改築することになり、やってきた大工さんが昼食もとらずに夢中で働いておられる姿を見て、面白そうだな~と思いました。京都奈良の古寺を見て回り、睡眠時間を4時間に絞って読書に励みました。学歴のない安藤忠雄さんは、なぜこうも世界的に知られる著名な建築家になれたのでしょうか?それはきっと彼は建築の「本質」を徹底的に学んだからではないでしょうか。高校を出たあと、安藤さんはアルバイトをしながら一年間、建築学の教科書を徹底して勉強しました。独学です。大阪大学京都大学の建築学科の学生が4年間かけて学ぶ教科書・専門書を全て買ってきて、一年間で全て読破したといいます。朝から夜遅くまで家にこもりっきりで勉強していたので、近所の人たちからは「忠雄ちゃんはおかしくなってしまった」と言われるほどだったそうです。自分なりの「命がけ」で独学をやり通せたのは、かつて見た大工さんの姿が心に焼き付いていたからでした。それくらい集中して、一年間で建築学の「本質」を勉強しました。その基礎・基本があるからこそ、一流の建築家になれたのではないでしょうか。

 本質を知る人と、知らない人。その差はあとあとになって明確になっていきます。たとえ本質を勉強していない人でも、器用な人は、表面的に事象をとらえて、上手に仕事をこなすことができるでしょう。でもそれでは一流にはなれません。本質を勉強した人と、していない人の差は、初めはあまり現れません。特に若い時は、単純な仕事が多いので、本質を知らなくても、仕事は何とかこなせるのです。表面的に仕事を右から左に流しているだけの時は、大きな差は出ないことでしょう。しかし、ある程度の年齢になって、いろいろなことを総合的に判断しなければならない立場になった時、本質を知っているのと知らないのとでは大きな差が現れます。世の中は複雑で、年齢を重ね地位が上がるにしたがって仕事の複雑さは増していくからです。複雑なことを正しく判断するには本質を知らなければならないのです。

 安藤さんは、「東京大学特別栄誉教授」という肩書で活躍をしておられた時期があります。ご存じの方もいらっしやるかもしれませんが、安藤さんは経済的な事情から大学を出ておられません。高校を卒業したあと独学で建築学を勉強し、実績を築いた人です。その方に「東大特別栄誉教授」という役職を与えた、東大の懐の深さには驚いたものです。そもそも大学の教授は、自校の出身者を選ぶのが普通でしょう。そこいらの大学では自校の出身者の教授の地位を確保するために、わざと優秀な教員を採用しなかったり、追い出したりという噂も聞きます。それでも東大はあえて安藤さんを選びました。安藤さんは、東京大学の入学式において祝辞を述べて欲しいと頼まれた時、自由に喋らせてくれるならという条件の下、引き受けました。入学式の会場になった日本武道館での話です。3,000人の新入生に対して2階の保護者席にはその倍の6,000人が参列していました。そこで彼は次のように言いました。2階席に座っている皆さんは本日は会場から出て行ってください。今日は非常に大切な日です。親が子供を断ち切り、子供が親を断ち切って自立した個人というものを作るスタートの日なのです。そんな重要な日に親がそばにいては邪魔になります。2階席はさぞやざわめいたことでしょうね。これは彼にしかできない発言だったかもしれません。安藤忠雄さんの生きざまを、まさに言葉にしたものだからです。彼は大阪の府立工業高校しか出ていません。高校在学中にプロボクサーのライセンスを取得し、フェザー級でデビューしたのも有名な話です。中学生の頃から建築には興味を持っていました。経済上の理由で大学には通えなかったため、建築の専門教育は一切受けていません。全て独学です。建築科の学生が通常4年かけて学ぶ内容を1年で習得し、建築士試験に合格したという伝説の持ち主です。ここら辺を知ると、なぜ入学式に参列した親たちに向かって、退場を願ったのかが理解できることでしょう。

 自立した人間を育てるために、親が子供を甘やかしてはいけないということはよく言われます。しかし、現代において全てを与えられている恵まれた子供たちは、「夢」を持てないでいるのです。考えてみれば気の毒なことなのかもしれません。格差社会です。幼い頃からさまざまな塾へ通い、恵まれた環境にいなければ、高偏差値の大学へ入学することは難しいのが現実です。ある程度、どういう暮らしをしてきたのかで、その後の人生が決まってしまうのです。安藤忠雄さんが生き抜いてきたような社会は現在、目の前にはありません。大学は人生で最後の教育機関です。社会へ出るため、どのように自ら責任ある行動をとれるようになるのか。それを訓練するための場です。入学式について行きたい気持ちを抑え、自立への第1歩を踏み出す意志を見せなくてはならないのではないでしょうか?

 安藤さんは2009年8月に、胆管胆嚢十二指腸の交点にガンが見つかり、三つとも取り除いておられます。2014年6月には膵臓にガンがあることが分かり、膵臓脾臓を取ることにしました。医者から「膵臓の全摘をして生きている人はいるけれど、元気になった人はいない」と言われ驚きました。「五つも臓器を取って元気なのは縁起がいい」と、設計の仕事を依頼されたこともあるとか。今の仕事の比率は、設計3、後進の指導3、ボランティア3といった感じで取り組んでおられるそうです。これからも人の心の中に残るような建築を造りたいと願って闘っておられます。「人々の記憶に残り、あってよかったと思ってもらえるものを造りたい」。ものはいずれ消えてなくなりますが、住んだり、見たり、使ったりした人の心や記憶の中で、どれだけ再現されるのか。それを大事にした建築物を設計したいという挑戦心なのでしょう。年齢を重ね、体だけでなく、好奇心のメンテナンスも心がけておられる安藤さんです。「人生100年、熟さない青いりんごのように青春を生きる」が人生哲学だとか。次々と新しい建築物を引き受けて快進撃しておられる印象がありますが、コンペでの勝率は「1勝9敗」とご自身がおっしゃっておられました。

 NHKのEテレで、2017年3月26日(日) 午前5時~(60分)に放送した「こころの時代~宗教・人生~「“しゃあない”を生きぬく」」が再放送されていたのを興味深く見ました。世界的な建築家の安藤忠雄(あんどうただお)さんを取り上げた番組で、がんで5つの臓器を全摘した今も仕事を続けておられます。幾多の困難を「しゃあない」と受け入れ、その状況に応じて工夫する生き方を聞きます。安藤さんは、7年前からがんと向き合い「しゃあない」と受け止めながら、活動を続けておられます。安藤さんは大阪の長屋で育ち、独学で建築家になりました。恵まれない環境や幾多の困難を「しゃあない」と受け入れ、その体験を発想源として建築に生かしてきました。「立ちはだかる壁にこそ無限の可能性がある」と語ります。今、病や死という大きな苦難を受け止めながら、前に進む心のあり方を伺う内容の濃い番組でした。

 建築家の枠にとどまることなく、幅広い社会活動にも専心しておられます。2019年に大阪市に寄贈した図書館「こども本の森 中之島」を発端とした「こども本の森プロジェクト」の国内外への広がりを見渡すことができます。香川県では、離島の子どもたちのために安藤さんが県に寄贈した「こども図書館船ほんの森号」の運航も4月24日から始まりました。船内には、地域住民から寄贈された海に関する絵本や図鑑など約2,000冊が収蔵されています。

 安藤さんは、人生を通して建築に打ち込んでこられましたが、青春とは年齢ではない、と感じておられます。建物が手入れをすれば良いコンディションを保てるように、人間も心の持ち方をメンテナンスすることで、いつまでも青春を生きることができるのだ、と言われます。♥♥♥

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「成城石井」のアップルパイ

◎週末はグルメ情報!!今週はアップルパイ

 寒くなると、りんごがますますおいしく感じる季節ですね。りんごを使ったスイーツといえば、やっぱり「アップルパイ」ですね。あま〜く煮込まれたりんごのフィリングがたまりません。私はアップルパイにはちょっとうるさくて、全国の美味しい「アップルパイ」を食べ歩いています。今日、「ポテトサラダ」を買うために、岡山駅サンステ2階にある「成城石井」をのぞいていたら、偶然見るからに美味しそうな「アップルパイ」を見つけました。いかにも美味しそうですね。私は早速買って帰りました。「成城石井」「アップルパイ」は、一般的なイメージをひっくり返す“常識破りな逸品”なんです。今日はその「成城石井自家製 青森県産りんごまるごと1個使ったアップルパイ」(863円)をご紹介しようと思います。りんご好きさんにオススメの逸品ですよ。

 成城石井のスイーツコーナーには、心惹かれるスイーツがいっぱい並んでいます。その中でも目を奪われるのが、この「成城石井自家製 青森県産りんごまるごと1個使ったアップルパイ」。まず目を引くのが、そのボリューム感です。バラのように美しく並べられた薄切りりんごが、パイ全体を覆っています。これはもう、見るだけでテンションが上がりますね。しかも、このアップルパイは、全国スーパーマーケット協会主催「お弁当・お惣菜大賞2024」で見事入選を果たします。食のプロも認めた逸品ということです。店頭ではこのようなパッケージで売られています。ちなみに、カロリーは8等分したうちの1切れで約106kcal。これならおやつにもちょうど良いですね。シナモンの香りが食欲をそそります。横から見ると、何層にも重なったりんごの迫力が、パイというより、ほぼ「りんごを食べている」感覚です。普通の「アップルパイ」は、煮込まれたりんごのフィリングが主役ですが、この「アップルパイ」は違います。りんごがシャキシャキでフレッシュ感が楽しめるんです。外側のバターの香り豊かなパイ生地のサクサク感や、中に入っているクレームダマンドの甘さも、りんごを引き立てています。皮が少し残っているので、りんご食感のアクセントもバッチリ。りんごの甘みと酸味が自然に引き立って、最後まで飽きずに食べることができます。

 りんごが主役なので、見た目以上にあっさりした味わいです。シェアして楽しむのも良し、「全部一人で食べちゃおう!」という贅沢な楽しみ方もアリです。薄切りりんごが重なっているので、意外とペロリといけちゃいますよ。りんご好き必見!成城石井「アップルパイ」は贅沢スイーツと言ってよいでしょう。

 成城石井「自家製 青森県産りんごまるごと1個使ったアップルパイ」は、りんごを贅沢に楽しめる特別な一品で、見た目も味も大満足のスイーツです。ぜひ、家族や友達とシェアして楽しむも良し、自分へのご褒美にするも良し!成城石井で見かけたら、ぜひ試してみてくださいね。オススメしておきます。♥♥♥

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反町キャスター

 プロ野球中継のない時には、私はBSフジ(午後8時~)でやっているニュース番組「プライムニュース」をよく見ています。政治・経済問題に突っ込んだ白熱した深い議論が展開されており、なかなか面白い番組だと思って見ていました。先日たまたまチャンネルを切り替えたところ、メインキャスターの反町 理(そりまちおさむ)さん(60歳)の姿がありません。長野美郷キャスター(フリーアナウンサー)と竹俣紅アナウンサーの2人が登場していました。長野キャスターは番組冒頭で、「今夜の番組は、先ほど公表されたフジテレビに対する第三者委員会の報告書を取り上げます。第三者委員会は報告書で、フジテレビの企業統治に問題があったと指摘しています。また、報告書には、反町キャスターの事案についても、フジテレビの対応に問題があったと指摘する部分があります。反町キャスターからは、状況に鑑み、番組の出演を見合わせたいとの申し出がありました。BSフジとプライムニュースではこれを受け、今夜は私、長野と竹俣アナウンサーの2人でお伝えします」と説明されたそうです。

 先日発表になった、フジテレビ問題の「第三者委員会」の394ページにもわたる詳細な報告書の中では、当事者間の生々しい(腹立たしい)メールのやりとりが明らかになり驚かされました。当事者たちによって削除されていたものが、最新技術で復元されたようです。その副産物として思わぬ過去の“悪事”が表に出てきました。第三者委員会は3月27日付で取締役を退任していた反町 理氏にセクハラとパワハラ行為があったと認定し、3月31日、キャスターを務めるBSフジの報道番組「プライムニュース」の出演を急きょ、見合わせる事態となったのです。第三者委員会は中居正広氏問題で、社員から聞き取り調査を行った際に、「多数の社員から反町氏が報道局の後輩女性社員2人に対して行ったとされるハラスメント行為の対応が不適切。昇進を続けることで、セクハラやパワハラを相談しても無駄と思わせる結果となっている」との意見が寄せられたことを契機に調査したといいます。反町氏は2006年~2007年にかけて、女性社員に対し、1対1での食事やドライブに誘うなど拘束。その後、女性側が誘いを断ると、業務上必要となるメモを共有しなかったり、部内一斉メールで女性を叱責したり、電話で怒鳴るなどしたといいます。また、別の女性社員にも同様に食事を断られると、パワハラに及んだとのこと。反町氏は早大政経学部を卒業後、1987年にフジテレビに入社。ワシントン支局勤務、首相官邸キャップ、政治部デスクなどを経て2009年から同番組のキャスターに就任しました。番組異動を経て2019年から同番組に復帰しました。政治畑の出身で、政治部長や解説委員長を歴任し、自民党や野党中枢とのパイプが太いことで知られます。2018年に反町氏が「プライムニュース イブニング」のメインキャスターに就任するタイミングで、『週刊文春』がパワハラ、セクハラを報じました。ところが、当時の宮内正喜代表取締役「記事は事実無根」として、文春に法的措置を取る姿勢を見せる一方で、女性社員には口外しないように求め、火消しを図ります。反町氏は「文春砲」以降もBSフジで「プライムニュース」(月~金曜金午後8時)でキャスターを務めるなど、同局報道番組の「顔」となります。結局、反町氏は降板することもなく、2020年には執行役員、2021年には取締役に就任と、次々と出世していきます。第三者委員会はフジテレビ内の体質を物語る「重要なハラスメント事案」として、断罪しました。「流れ弾というよりも自業自得で、社内で相当嫌われていたんでしょうね。ハラスメント認定され、もうテレビに出ることはできないでしょうね」と自民党関係者は述べています。フジテレビの“看板”の一人でもあり、今後の政治報道生命を危惧する声も出始めています。

 ハラスメント行為としては、まず「女性社員mに対する行為」を挙げ「女性社員mの申告によると、2006年頃に、反町氏から食事の誘いが何度かあり、何度か一対一での食事に行ったところ、休日に反町氏からドライプに誘われ、そのまま三崎のマグロを食べに行き、花火を見て、そのあと横浜でホラー映画を見て、バーに連れまわされることで1日拘束されたことがあった。また女性社員mが、この出来事の後、反町氏からの食事等の誘いを断るようになったところ、反町氏は、女性社員mに対して業務上必要となるメモを共有せず、女性社員mに対して原稿が遅いなどと不当な叱責を部内一斉メールで送信したり、電話で怒鳴られたり、威圧的な口調で話をされたりしたとのことである」としました。

 また、「女性社員nに対する行為」にも触れ「女性社員nの申告によると、2007年から2008年頃に、反町氏は女性性社員を一対一での食事に誘っていたりしていたが、あるときから、休日に今何しているのか写メを送れという趣旨のメールをし、食事の誘いをするようになったため、女性社員 はこれを断り、そうしたところ、女性社員nに対しても原稿が遅いなどと不当な叱責を部内一斉メールで送信したり、電話での論旨不明な叱責をしたりしたとのことである」と伝えました。

 「本件ハラスメント行為に関する評価」としては「反町氏は、女性社員m及びnと食事に行った事実、女性社員mに対してメモを送付しなかった事実、女性社員nに対してメールを送付した事実を認めているものの、行為の詳細については記憶にない等と供述し、メモを送付しなかった事実については全員に送付しているわけではなく理由があるなどと主張し、叱貴の事実も否認する。本件ハラスメント行為は2006年及び2007年と相当程度前の出来事であるところ、その厳密な認定は困難ではある。しかし、女性社員m及びnの申告によれば、反町氏の行為は、一対一で食事に誘うものも含まれたり、プライベートの写真の送付を求めたりするもので、職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動により職場環境が悪化したものとして、セクハラに該当し得るものである」としました。さらに「また、休日に行動を共にさせたことや、業務上必要なメモを共有せず、周囲の社員に見えるように叱費をしたことは、上司という職場における優位的な関係を背景に、業務の適正な範囲を超えた言動で、労働者の就業環境を悪化させる行為として、パワハラに該当し得るものである」とも指摘しています。

 BSフジでは4月2日「プライムニュース」の番組内で、この自社・反町キャスター問題の検証を行いました。「言語道断」「経営一部トップが(これらを)問題と思っていないのが大問題。おとがめもなく取締役になっていくとはあり得ない」「信賞必罰が全く行われていない」と厳しく断じました。これを見ても、ずいぶんフジテレビという会社の体質も変わろうとしていることが伝わって来ます。ただ、政治家にも顔が広く、長年の取材経験に基づき各分野に精通していた反町さんの分析・評論と、若い女性アナウンサーの機械的進行では番組の重みが全然違います。今はただ原稿を読んでいるだけでという印象で深みがありません。ゲストの面々は今までとそう変わってはいないのですが、最近のこの番組はあまり面白くありません。議論がかみ合わないこともしばしばあります。やはり司会の言動・政治観・歴史観に筋が一本通っているのとそうでないのとの違いでしょう。自業自得とはいえ、これは致し方のないことでしょうか。♥♥♥

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マリックさんの顔面神経麻痺

 「超魔術」「ハンドパワー」で知られるMr.マリック(76歳)さんが、35年にわたる芸能活動の中で最もピンチに陥ったのが1991年で、人気が急上昇している最中のことでした。ある日突然、「顔面神経麻痺」を発症。テレビ番組に出ながらも2年にわたって闘病を続けました。次々と不思議な現象を巻き起こす「ハンドパワー」も、自らの病気を防ぎ、治すことはできませんでした〔笑〕。「子供の頃から入院なんて一度もしたことがなかった」というマリックさんが突然、顔面麻痺に襲われたのは、1991年のある日、友人と都内でもつ鍋をつついていた時のことでした。

 「口に入れたつもりのモツが、ポロッと器に落ちたんです。それを拾って食べようとしたら、またポロッと。そうしたら、向かいに座っていた友人が『ちょっとトイレに行って、鏡を見てきてほしい』と言いました。きっと、(表情がおかしいと)言いづらかったんでしょうね」

 その時は、まだ自らの異変に気づいていませんでした。しかし、鏡を見て驚きます。 「顔の半分がズレているんですよ。眉毛の高さが左右で違っていた。そのうち、目がチカチカしてきて、右目を動かせない。『何だこりゃ』と思いながら席に戻り、家に帰りました」 医師の診断は顔面神経麻痺「耳の奥あたりにある神経が萎縮(いしゅく)していて、麻痺の症状が出た」ことで、顔の右側が動かなくなっていると言われたといいます。即日入院しましたが、治療は首の後ろにある「星状神経節」に午前と午後の2回、ブロック注射するだけ。「それなら自宅から通院します」と申し出ましたが、医師からは「絶対に病院に来なくなるから、入院してください」と言われました。どうしてだろうと不思議に思ったものの、すぐにその理由が判明しました。「とにかく、注射がメチャメチャ痛いんです。針を刺されると、何か体の中にブワーッと入ってくるのが分かった後、暴れたいくらい痛くなる。動くと危ないので、4人の看護師さんに体を押さえられて注射されていました」 病院には同じ治療を受けている患者さんがいて、注射の際にはズラリと並べられたベッドに寝て順番を待っていました。当時、すでに有名人だったマリックさんは、カーテンを引かれた一番端っこのベッドをあてがわれていました。 「治療が始まると、注射を打たれた人の『ギャー』という悲鳴が聞こえる。それがだんだん近づいてくるんですよ。『あと2人、あと1人』となって『キターッ!』と(笑)。もう拷問でした」こんな特集が『スポーツ報知』で取り上げられました(写真下)。

 「出る杭は打たれる」と俗に言われますが、まさに人気絶頂、そんなさなか、マリックさんのDSCN3092魔術・ハンドパワーは、インチキだという糾弾本が出版されます。ゆうむはじめ『Mr.マリック超魔術の嘘』(データハウス,1990年)でした(写真右)。しかも何冊も続編が続きます。人気マジシャンの暴露本ですから、売れないわけがありません。マリックさんはストレスが溜まったせいで、顔面麻痺になってしまうのです。それまでもマジシャンとして活動していましたが、1988年に日本テレビ系「11PM」に出演して「超魔術」を披露すると人気が爆発。すぐに同局系「木曜スペシャル」で特番が作られるようになりました。「でも、急に有名になったからか、周囲からいろいろ言われるようになりました。『マリックは超能力者なのかマジシャンなのか』とかね。それで『超能力なんてものはないからインチキだ』と。私は自分の力を超能力なんて言ったことはなくて、最初から『超魔術』と呼んでいたんですが。それで、仕事のストレスがどんどんたまっていきました」そして入院です。

 当時はマネジャーもつけておらず、イベントに出演すると「お寺を差しあげますから教祖様になってください」「地図を持ってきたので、埋蔵金がどこにあるか指さしてください。見つかったら半分あげるので」などという人が楽屋まで入り込んできたこともあったといいます。同時に、家庭にも大きな問題が発生していました。

 「娘(ミュージシャン・LUNA)が学校をクビになったり、家出して警察に呼び出されたりしてね。人間、悩み事が1つなら解決できると思うんです。でも、2つ以上あるとおかしくなっちゃう。私の場合は仕事と家庭でした。それで、脳が“交通事故”を起こしたんでしょうね。どこか弱い部分に影響が出てくる。それが、私の場合は顔面の神経で、麻痺となって表れたんだと思います」

 ステージ上で「ハンドパワーです」と言えなくなってしまい(パピプペポが言えない)、入院生活を一年も余儀なくされたこと(当時のマリックさんに対するバッシングは半端ではありませんでした)、娘のLUNAさん(ラップ歌手)が、父親が有名人のために小学校でいじめられ(スプーンを親父に曲げてもらってこい!」)、中学校でグレて退学になったことを親子二人で懐かしく回想しておられました。娘からの歌のメッセージに、目頭を熱くしておられるマリックさんの姿が印象的でした。あの華やかな超魔術マリックさんにもこんな辛い時期があったんですね。

 麻痺があっても、それを隠し通して仕事を続けました。右側の麻痺が完治しそうになった時、今度は左側にも同じ症状が出て、結局、闘病期間は2年にもわたりました。その中で変わったことは、将来に対する考え方です。この時期の苦しい経験が「先の目標を立てるよりも、目の前のことを一つ一つ、丁寧にしていく」という心境の変化につながったと言います。

 「今日元気でも、明日何が起きるか分からないということを体験しちゃったものですから。遠い目標を立てたり、先のことを心配して過ごすよりも、目の前に来た仕事を一つ一つ、丁寧にベストを尽くしてやっていこうと切り替えました。それを繰り返してきたら、こうして35年を迎えられたということですね」

 4月25・26日には、東京大阪で35周年を記念したショー「Mr.マリック超魔術団2025」が開催されます。これまでの活動の総決算とするつもりだと言い、マリックさんのショーではおなじみの「観客全員でスプーン曲げに挑戦」も行われるほか、マリックさんを見て育ち、それぞれの国で一流のマジシャンとなった中国のリュー・チェン、韓国のチャーミング・チョイが現地からリモートで出演し、国境を越えた「超魔術」が披露される予定です。自分の後に続く次世代のマジシャンとしてマリックさんが期待をかけている「TAKUYA&YOURI」、盟友のマギー司郎さんらも出演します。

 「今まで、私の人生の転換期に会った人への感謝を込めて、やりたいと思います。ただ、私の超魔術だけだと疲れてしまうので、マギー(司郎)さんにも入ってもらって笑わせてもらう。緊張、緩和、緊張、緩和とジェットコースターのようなライブにしようかなと思っています。人間はリラックスした時にパワーが出る。緊張している時は集中力が発揮できないですからね。リラックスしている時に『曲がれ!』と念じれば、スプーンは曲げられると思います」

 マリックさんが長年をかけて、目の前のものを少しずつ積み上げていた結晶。それが、「超魔術」を生み出すパワーとなっています。4月21日(月)のテレビ番組「徹子の部屋」では、マリックさんとマギー司郎さんの「超魔術」「笑魔術」のコラボトーク・マジックが披露され、久しぶりに笑わせてもらいました。♥♥♥

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難解な第6問

 「共通テスト」の第一日目。終了してすぐ午後6時頃に自宅に問題(R、L)が届きます。一生懸命に問題を解きます。そして午後9時に電話取材を受ける、というのが私の毎年のルーティンとなっています。今年の電話口では開口一番「リーディングの問題形式は予想通り第1問~第8問でした。予想通り分量が激減。難度は去年より易しくなっています。でも第6問は生徒たちには解けません。」と申し上げました。ここで驚くのはこの【第6問】を『解きやすかった』と平然と公言する関係者がいることです。どんな感覚で英語を読んでいるのでしょうか?私には信じられません。事実、ベネッセ・駿台のデータによれば、今年の「共通テスト」の大問の中で最も正答率が悪かった(41%)のがやはりこの第6問】でした。小問別の正答率は次の通りでした:問1(29.5%) 問2(56.3%) 問3(46.8%) 問4(32%)   中でも問1(全問の中で最悪)と問4(全問の中で二番目に低い)が極端に出来が悪かったのにもちゃんと理由がありました。 

 今年の「共通テストリーディング」第6問は「友人が書いた架空のストーリーを読む」という設定の文章で、非現実的かつシュールな内容の文章が目立ち、従来の評論的、実用的な文章の読解に慣れた受験生たちには、ハードルが高かったと思います。なぜこの問題が難しかったかのという具体的な理由を探ってみたいと思います。

(1)複雑な時系列構造(あっちへ行ったり、こっちへ行ったり)

時系列が前後する形式で記述されているために、時の流れを整理する力が問われます。ダイヤ(♦)マークが場面が切り替わるヒントになっていました。回想シーンを含めてあっちへ行ったりこっちへ行ったりで、受験生には話の展開が分かりにくかったと思われます。「共通テスト」では、本文に出てきた順番と実際の出来事の順番が違っている場合があり、注意が必要です。

(2)推測力・想像力が必要(書いてない)

本文に書いていない内容を読み取る力、行間を読む力が求められています。ここら辺が「共通テスト」の新傾向です。姉が特別な施設に送られたことを後悔し、息子を同じ運命にさせないという母親の真意「息子とこのまま一緒にいる」ということを、前後の文脈から把握しなければなりませんでした。

(3)選択肢の正確な分析が必要(精読の重要性)

不要な情報や曖昧な選択肢を排除し、本文の内容に基づいた正しい判断力が求められています。正しい「言い換え」を選択しなければなりません。日頃どのくらい「精読」ができているかがカギを握っています。

(4)物語形式ゆえの高い難易度(物語は苦手な人が多い)

そもそも「物語形式」の文章は受験生が苦手です。その理由は、①書き出しが分かりにくい ②話の流れをつかみにくい(5W1Hの法則) ③時系列で混乱 ④セリフが誰のもの? ⑤「言い換え表現」が多用される  英語力・文章の理解力・多角的な理解力・多読経験が重要になってきます。

 「超能力を持った少年が成長する様子を描いた物語」を読んで、それに対する感想メモを完成させる問題でした。少年の成長を時系列に並べる問題が出題されましたが、回想シーンとして過去の話が挿入されており、話の展開がつかみにくかったと思われます。主人公とメロディの関係もはっきりとは書いてなく本文中の手がかりから推測しなければならないことも概要把握を難しいものにしていました。私は当初から、第6問「心温まるいい話」が出るものと予想していましたが、あまり面白い文章とは言えず、ちょっとがっかりでした。今後の対策としては、センター試験時代の2000年前後の【第6問】に数多くの心温まる思わずホロリとする英文が出題されていますので、それをやるといいと思います。私は現在、勝田ケ丘志学館の生徒たちに、そのジーンとくるいい話を読んでもらっています。

 今回何と言っても「最も難しかった問題」は第6問でした。文章自体に過不足がある状態で、これを改良する前提で文章を読むのは、状況設定からして非常に難易度が高いものがあります。「個人的にはへたくそな文章を読んでフィードバックしてあげる形式それ自体が、テストとしていかがなものかと思う。テストとしては、読みごたえがあり、しっかりした文章を読ませて、ちゃんと読めているかを確認したほうが、良いのではないか」という意見まで出てきました。私はもう一度丁寧にこの問題を解いてもらうために、ポイントをプリントにまとめて(2枚)復習をしました(写真下)。♥♥♥

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教員研修会

 3月18日(火)に岡山県立笠岡高等学校で二年生の生徒に「共通テスト」の授業をさせていただいた(⇒詳しい紹介はコチラをご覧ください)後で、同校の先生方に「学力向上のための教員研修」の講師を務めました。私に与えられたテーマは「難関大に向けた進学指導、上位層をさらに伸ばす学習の仕掛け、ヒントなどについて」というものでした。まず「八幡成人物語」という紹介映像をご覧いただいた後で、私がお話させていただいたのは下記のような内容でした。

 生徒・先生との出会いを大切にして「お金を追わずに仕事を追って欲しい」、理想の教師像としては「VSOP」を目指し、生徒にとって「高い壁」であって欲しいことを訴えました。そして我々教師の仕事は「生徒の心に火をつけること」に尽きること、そのための具体的な実践を紹介し、「努力は夢中に勝てない」ことをお話しました。難関大学に合格しよう(させよう)と思ったら「散歩のついでに富士山に登る」ような気持ちではとうてい実現することはできません。たり前のことをカになってゃんとやる」(ABC)姿勢を徹底して、いきあたりばったりの指導を排除して、「設計図」をきちんと描くことで初めて大きな目標が達成できることを、今までの八幡の経験からお話させていただきました。お配りした詳細な資料と共に、少しでもご参考にしていただければ幸いです。♥♥♥

▲私が松江北高19年間の勤務でたどり着いた結論です

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